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cozycoach @ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…
2011.11.08
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 作家になるための条件とは何でしょうか。

 ”作家の条件 ”(2004年4月 講談社刊 森村 誠一著)を読みました。

 小説界のトップランナーが明かす作家になるための条件を中心に、多岐のテーマにわたって、新聞、雑誌等に発表した文章を集めたエッセイ集です。

 中心は、最初の作家になるための条件のエッセイです。

 作家になる3つの方法、短編と長編の組み立て方の違い、トリックを思いつく訓練、ベストセラーは結果にすぎないなどについて語られた小説家を目指す人へのメッセージとなっています。

 森村誠一さんは、1933年埼玉県熊谷市生まれ、青山学院大学卒業、9年余のホテルマン生活を経て、1969年に江戸川乱歩賞、1973年に日本推理作家協会賞、2011年に吉川英治文学賞、2004年に日本ミステリー文学大賞を受賞し、精力的な執筆活動を行なっています。

 大学卒業時点は、就職不況時代であったため、本人の希望しなかった大阪のホテルに就職し重役の娘と結婚しましたが、後にホテルニューオータニに転職しました。

 ホテルマン時代の自分の個性を徹底的に消す職場環境を、鉄筋の畜舎と感じたといいます。

 内容は、文芸論、交友録、美術論、政治論、人生論、趣味等、多岐のテーマにわたっています。



 ですが作家予備軍が多いことは確かです。

 日本の場合、日本語が読み書きできれば、だれでも自分の人生という小説は書けます。

 ですが、小説が日記と異なるところは、読者の存在です。

 読者なき 小説は、小説とは言えません。

 小説に限らず、すべての創作物は受取り手がいて、初めて成立します。

 それも少数ではなく、ある程度ませんとまった 受取り手に支持されて成立する分野です。

 生存のための条件が満たされると、人間は自分が社会において認められていることの証明を求めるようになります。

 社会における存在の証明ですから、社会、すなわち受取り手が認めてくれなければ意味がありません。
 創作物は作品の共有者が多ければ多いほど価値を増すという性質を持っています。

 これを書かなければ生まれてきた意味がないというほどおもいつめて書いたものが作品として結晶し読者に支持され、その副産物として名声や収入が得られれば、作家冥利、これに尽きると言えるでしょう。
 利益を目的とするビジネスと異なり、まず表現欲ありきが作家志望の主流と言えましょう。



 だれがなにをどのように書こうと自由です。

 一方で、作品本位から新刊中心主義、売上げ至上主義に移行した今日では、書店に置かれる書物のライフサイクルが速くなっています。

 どんなに内容のよい本で も、売れる見込みのない本は書店の店頭に置かれることもなく、開梱されないまま、出版元に返送されることもあるといいます。

 書店と出版社に求められるものは作品の質ではなく、読者の数です。

 読者は、人生いかに生くべきかという重い命題から、娯楽、時間潰しまで、読者の好みや、生活環境、精神の状態などによってさまざまです。



 一口に面白さと言っても種類があります。

 一般から遊離せず、また文芸と通俗の間に一線を画すものは、作者の志であるとおもわれます。

 読者に迎合した、読者の背丈以下の作品は、通俗に堕します。

 読者の背丈以上、あるいは読者に対抗する作品は、読者との間に知的葛藤を生じて、読者の背丈や、知的面積を引き延ばします。

 作者の志と独りよがりを混同すると、読者から遊離してしまいます。

 志は作者それぞれによって異なりますが、志のある作品は風格があり、香りが高いです。

 志なき作品は下品であり、臭気を放ちます。

 ですが、志が重すぎるとエンターテインメント性を圧迫します。

 現役の作家であるためには、常に作品を生みつづけなければなりません。

 膨大な作品を積み重ねようと、またどんな名作、傑作を発表しても、書くことをやめた瞬間から、本質的に作家ではなくなります。

 作品が残っていても、それは作家が残っていることではありません。

 年間500人近く誕生する作家の中で、生き残っていくのは3人ないし5人と言われていますが、一時、洛陽の紙価を高めた 作家が、突然消えてしまうことも珍しくありません。

 今日の作家は、単に机の前に座っている持久力だけではなく、年月の風化に耐える継続力が求められます。

 作家の武器は文章であり、文体です。

 文体は作者の文章のスタイルであり、個性です。

 作家独特の誤字・誤用も文体の一部になる。作者名を隠しても、作者 が当てられるような文章が文体です。

 作家が言葉を失うことは、武器なき軍と同じです。

 文化の原点は、まず言葉であり、人間の間にコミュニケーションが生じて社会が形成されてきました。
 言語を守ることは、作家の重大な責任です。

第1章 作家の醍醐味
第2章 芸術を堪能する
第3章 芳醇なる邂逅
第4章 日々を満喫する
第5章 年月の味わい






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Last updated  2011.11.08 19:42:57
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