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日本は世界の10%以上の資産を持っているのに、たった1億数千万人を満足に生活させられない国だそうです。
日本に必要なのは経済成長や消費増税ではなく、経済循環を正しくすることである、ということのようです。
”「新富裕層」が日本を滅ぼす”(2014年2月 中央公論新社刊 武田知弘著/森卓郎監修)を読みました。
金持ちが普通に納税すれば消費税はいらないといいます。
武田知弘さんは1967年福岡県生まれ、西南学院大学経済学部を中退し、1991年にノンキャリア職員として大蔵省に入省しました。
1998年から執筆活動を開始し、1999年に大蔵省退官後、出版社勤務などを経てフリーライターとなりました。
森永卓郎さんは1957年東京都生まれ、東京大学経済学部を卒業し、1980年に日本専売公社に入社、1982年経済企画庁総合計画局へ出向しました。
1986年三井情報開発株式会社総合研究所へ出向、その後、三和総合研究所への入社を経て、2006年に獨協大学経済学部教授に就任しました。
今の日本人の多くは、現在の日本経済について大きな誤解をしているとのことです。
たとえば、あなたは今の日本経済について、こういうふうに思っていないでしょうか。
”バブル崩壊以降、日本経済は低迷し国民はみんなそれぞれに苦しい。”
”金持ちや大企業は世界的に見ても高い税負担をしている。”
”日本では、働いて多く稼いでも税金でがっぽり持っていかれる。”
”その一方で、働かずにのうのうと生活保護を受給している人が増加し、社会保障費が増大し財政を圧迫している。”
”日本は巨額の財政赤字を抱え、少子高齢化で社会保障費が激増しているので消費税の増税もやむを得ない。”
しかし、実はこれは全部、嘘なのであるといいます。
事実とは、むしろ正反対なのだそうです。
国や公的機関が発表している誰でも人手可能なデータを見るだけで、それがわかります。
たとえば、こういうことを言うと、あなたは信じられるでしょうか。
”この10年で、億万長者が激増している。”
これは、紛れもない真実であり、バブル崩壊以降、日本国民は皆苦しかったわけではなく、日本経済自体は悪くはなかったのです。
また、日本には実は世界的に見ても巨額の資産があります。
個人金融資産は1500兆円に達していますが、これもバブル崩壊以降に激増しました。
アメリカの3大投資銀行であるメリルリンチのレポートによると、金融資産を100万ドル以上持っている日本の富裕層は、ここ数年で激増しています。
2004年には134万人だった富裕層は、2011年には182万人になっているそうです。
182万人というのは、世界全体の富裕層の16.6%で、アメリカに次いで世界第2位です。
世界の人口の2%に満たない日本人が、世界の富裕層の16.6%も占めているのです。
そして、人口比率から見れば日本の方が富裕層が多く、日本は世界一の富裕層大国と言えます。
国税庁の確定申告データによると、個人事業者の年収5000万円超の者は、この10年で13倍以上になっています。
1999年にはわずか574人しかいませんでしたが、2008年には7589人に激増しています。
また、個人投資家の億万長者も激増していると思われます。
この10年間、国民のほとんどの収入は下がり続けてきました。
一方で、億万長者は激増しているのです。
なぜ億万長者がこれほど増えたのかというと、その理由は相続税の減税と高額所得者の減税です。
高額所得者は、ピーク時と比べれば40%も減税されてきたからです。
この結果、最高で26.7兆円もあった所得税収入の額は、2009年には12.6兆円にまで激減しています。
この減税分は、ほぼ貯蓄に向かったと言えるでしょう。
金持ちは元からいい生活をしていますので、収入が増えたところでそれほど消費には回しません。
ですから、減税されればそれは貯蓄に向かうのです。
その結果、景気が悪いのに個人金融資産が激増ということになったのです。
個人金融資産の大半は富裕層が持っているのです。
今、日本がしなければならないのは、これ以上、国民に我慢を強いることではなく、たっぷりため込んだ者たちの資産を有効に活用することだ、といいます。
そこで武田さんが提唱しているのは、無税国債です。
これは利息が付かない国債のことで、利子がつかない代わりに相続税が免除される点がメリットとなっています。
日本ではまだ発行されたことはありませんが、政府では無利子国債の発行がたびたび議論、検討されているそうです。
無利子国債によって、政府による金利の支払いをなくして短期的に財政の負担を軽減し、経済対策等の財源にあてることを目的としています。
しかし、長期的に見れば相続税免除によって税収が大幅に減るため、将来の財政につけが回るようになります。
また、無利子国債は、タンス預金など眠っている国民の個人資産を、国の経済対策等のために活かすことを目的としています。
しかし、相続税の免除につながることから、金持ち優遇の政策であるとの批判もあります。
これに対し森永さんは、富裕層への政策を考えるときには、彼らがカネの亡者だということを前提に考えないと実効性を担保できないと言います。
慎重に制度設計しないと、逆に富裕層を利するだけに終わりかねない、ということです。
第1章 激増する億万長者/第2章 大企業は巨額の資産をため込んでいる/第3章 デフレの本当の真実/第4章 日本経済が抱える二つの爆弾/第5章 消費税が日本を滅ぼす/第6章 消費税ではなく無税国債を/第7章 普通に働けば普通に暮らせる国へ