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cozycoach @ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…
2019.12.14
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 今大きな危機が迫りつつあります。

 日本の農業が壊滅するかもしれないという危機ですが、そのことに気づいている人は多くありません。

 ”日本を救う未来の農業-イスラエルに学ぶICT農法”(2019年9月 筑摩書房刊 竹下 正哲著)を読みました。

 日本の農業の国際競争力のなさを改善する上で、いちばん参考になるのは今や農業大国となったイスラエルの最先端技術を駆使した農法を学べば、日本の農業問題はほとんど解決できるといいます。

 一般に農業問題というと、低い自給率、農家の減少、農家の高齢化、担い手不足、耕作放棄地の増大、農地の減少などが思い浮かびますが、実はこれらは大きな問題ではありません。

 農業は変わるはずがありません。

 なぜなら、農業とは5千年以上の歴史を持つ人類最古の産業だからです。

 それは土を相手にする技術であり、土や自然が5千年前と変わらないのであれば、農業も変わるはずがありません。

 いや、変わってはいけないのです。

 そう考える人も多いことでしょう。

 しかし、農業もやはり変わらなければならない、と著者は考えています。

 しかも、ただ変わるだけではいけないのです。

 社会の変化と同じように、急速にドラスティックに変わらないといけないのです。

 なぜなら、そうしないと日本の農業は滅びてしまうからです。

 本書では、日本農業に迫りつつある危機を解説するとともに、それを乗り越えるための手段を提案しています。

 竹下正哲さんは1970年千葉県四街道市生まれ、北海道大学農学部、北海道大学大学院農学研究科で学び、2004年に博士号(農学)を取得しました。

 1999年大学院在学中に冴桐 由のペンネームで第15回太宰治賞を受賞し、その後、民間シンクタンク、環境防災NPO、日本福祉大学講師などを経て、拓殖大学国際学部教授となりました。

 日本唯一の文系の農業として知られる国際学部農業コースの立ち上げに尽力し、栽培の実践を重視した指導を行っています。

 かつて青年海外協力隊でアフリカに行ったことをきっかけに、世界中のフィールドを回り、海外の農業現場に精通しています。

 2015年に初めてイスラエルを訪問し、衝撃を受けたといいます。

 農業は、私たちが生きていく上で必要不可欠な穀物や野菜といった食物を育てています。

 土を耕し、水を活用し、植物という自然の恵みを、気候や天候といった不確実な環境のなかで育む、高度な知識と技術と経験が求められてきました。

 そんな農業分野に、いまICTやロボット、AIなどを活用した次世代型の農業が登場し、注目を集めています。

 ICTとはInformation and Communication Technologyの略称で、情報伝達技術と訳され、ITとほぼ同義です。

 ICTでは情報・知識の共有に焦点を当てており、人と人、人とモノの情報伝達といったコミュニケーションがより強調されています。

 海外では、ITよりICTのほうが一般的です。

 農業に関しても、これから急速な変化が次々と起きていくことになります。

 まさに革命と呼べる激変が起きるでしょう。

 でも、それはかつてなかったチャンスと捉えることもできます。

 たとえば農業AIロボットが登場してくれば、人間は単純労働から解放されることになります。

 もはや雑草取りで腰を痛めなくてもよくなるのです。

 それだけでも、農業のイメージが変わるでしょう。

 必然的に、まったく新しい形の農業になっていきます。

 日本の農業はずっと鎖国を続けてきました。

 戦後70年間以上、国を閉ざし、海外の農業を決して見ようとしてきませんでした。

 ひたすら国内だけを見る内向きの農業を展開してきました。

 それは世界との競争を放棄したことを意味しており、その結果、農業技術の進歩はストップしてしまいました。

 実は日本の農業の生産効率は、1970年代からまるで向上していません。

 日本の農業は世界最高レベルと信じている人は多いことでしょう。

 ですが、それはもはや正しい認識とは言えません。

 確かに1980年代ぐらいまでは、日本農業は世界をリードしていたかもしれません。

 でも今は、農業後進国になっていると言わざるを得ません。

 というのも、日本が鎖国をして長い眠りについてしまっている間に、世界の農業は著しく進化してしまったからです。

 センサーネットワーク、IoT、衛星画像、グラウトシステムを使った農業は、ヨーロッパ、アメリカ、イスラエルなどではもはや当たり前になっています。

 インドもそれに追いつきつつあり、中国もここ数年で海外の巨大企業を次々と買収することで、ハイテク農業を会社ごと吸収しつつあります。

 それだけ世界の農業は熾烈な戦いを繰り広げています。

 日本は植物工場という独自の路線を2000年代に展開しようとしましたが、うまくいきませんでした。

 補助金がなくなった途端に次々と倒産しているのが現実です。

 理由は、植物工場はコストが余りにかかりすぎ、採算をとることが難しいためです。

 ヨーロッパやイスラエルには、より洗練された栽培システムがあって、しっかりと利益が上がる仕組みになっています。

 今の時代、あらゆる産業は世界を相手に戦うことを強いられています。

 確かに、このまま鎖国を続けていけるのならば、それもいいでしょう。

 しかし、現実的には、鎖国をこれ以上続けることは難しいのです。

 もはやグローバル化の波は止めようがなく、それらは共通して、日本農業が世界に開かれることを強く要求してきていますし、農業補助金を廃止することも求めてきています。

 これからは、たとえ日本の国内であっても、海外の農産物と戦っていかねばならない時代となってしまいました。

 このまま指をくわえているだけだと、日本の農業は壊滅し、すべて海外に飲み込まれてしまう可能性が高いです。

 そうならないためにも、日本の農業は変わらないといけないのです。

 生産効率が今の2倍、3倍になれば、すなわちlヘクタールあたりの収量が今の2倍、3倍になっていけば、その分価格を下げることができるようになってきます。

 価格が下がれば、世界と対等に戦うことができるようになります。

 元々味は世界一なので価格さえ適正範囲に入ってくれば、むしろ世界一強い農産物になることができます。

 すると、農業が滅びるどころか、世界トップクラスの農業大国になることもできます。

 アメリカやヨーロッパ諸国のように、工業と並んで、農業も主要な成長産業になれます。

 農業が、日本の経済成長を引っ張ることだってできるかもしれません。

 すべては栽培法の改善にかかっています。

 そしてその栽培法は、今後10年の間に、テクノロジーの進化に合わせて急激に変わっていくと見込まれています。

 そのとき、イスラエルという国の農業が、大いに参考になると考えています。

 ほとんど雨が降らないイスラエルが有数の農業輸出国になっています。

 イスラエル農業の根幹を支えるのはドリップ灌漑で、農地に小さな穴が等間隔に開けられたチューブが張り巡らされ、穴からポタポタと点滴のように水を出して植物に水をやるシステムです。

 与えられた水がどれだけ作物に吸収されたかを示す水利用効率でいうと85~95%です。

 日本の灌漑の多くは、水田のように一気に水を流し込むのが一般的ですが、これでの水利用効率は40~60%にすぎません。

 このドリップ灌漑は、イスラエルの不利な降雨条件と土壌の問題を一気に解決するだけでなく、クラウド農業やAI農業の基盤となる技術です。

 イスラエルが通ってきた道は、日本がこれから歩まねばならない道を先導してくれているように見えるといいます。

第1章 日本に迫りつつある危機/第2章 すべてを解決する新しい農業の形/第3章 最先端ICT農業とは―イスラエル式農業/第4章 イスラエル式農業の日本への応用実験/第5章 近未来の農業の形





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Last updated  2019.12.14 05:49:49
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