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cozycoach @ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…
2020.06.27
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 洞窟は、地中にある一定の大きさの空間で、洞穴とも言われます。

 ”素晴らしき洞窟探検の世界”(2017年10月 筑摩書房刊 吉田 勝次著)を読みました。

 いまだに誰も見たことのない未踏の世界が存在する知られざる洞窟に魅せられた探検家が、日本と世界各地のいろいろな珍しい洞窟を紹介しています。

 一般には地下空間のうち人間が入ることが可能なものをいい、洞口の長径が奥行きよりも小さければ洞長2m程度でも洞窟と呼ばれます。

 水平方向に伸びている横穴や井戸状に開口している縦穴などがあります。

 通常、洞内空間は大気で満たされています。

 内部の気温は、一般に洞窟がある外部の平均気温になり、内部は外部と較べると夏は涼しく冬は暖かいです。

 また地中であることも含め、一般に湿度が高いです。

 洞口部では日光が差し込むこともありますが、氷河洞・雪渓洞などを除いて奥部は完全な暗黒となります。

 洞内空間が地下水・海水・堆積物で満たされている洞窟もあります。

 完全に水没している洞窟は水中洞窟、特に海面下に沈んだものは沈水洞窟と呼ばれます。

 広義には、自然洞窟だけでなく人工洞窟や混成洞窟を含みます。

 吉田勝次さんは1966年大阪府生まれ、洞窟探検家で株式会社地球探検社代表取締役、有限会社勝建代表取締役、社団法人日本ケイビング連盟会長を務めています。

 20代後半で洞窟にのめり込み、今まで入った洞窟は国内外含め1000以上にのぼるといいます。

 元々は登山を趣味としていたそうですが、やがて既に踏破されてルートもほぼ定められた登山には物足りなさを感じるようになり、1994年に雑誌で参加者を募集していた静岡県と愛知県の県境にある洞窟探検に参加しました。

 以降はケイビングを趣味とするようになり、1996年には仲間とともに「Japan Exploration Team」=日本探検チーム、略称J.E.Tを結成しました。

 2011年に一般社団法人日本ケイビング協会(Japan Caving Association)を設立し、洞窟探検のガイドやテレビ撮影のガイド・サポート、洞窟ガイド及びレスキューの育成活動、洞窟に関する学術調査などの活動を行っています。

 同団体は2016年に名称変更され、現在は一般社団法人日本ケイビング連盟となっています。

 暗くて、狭い洞窟に入っていくのはなぜ、とよく聞かれるといいます。

 危険を犯してまでなぜ洞窟に潜るのか、不思議に思えるらしいのです。

 暗くて狭い場所が好きな変人に違いないと思われている節もあります。

 ところが、実は高所恐怖症で閉所恐怖症と、相当な怖がりなのだそうです。

 高所恐怖症は重いほうで、小学生の頃は、街中の歩道橋でさえ立って歩いて渡れないほどでした。

 大人になって登山に初めて挑戦したときも、岩壁や氷の壁を登っているときは足がガクガク震えて止りませんでした。

 20代で洞窟探検を始めてからは、洞窟の狭いところを移動しているとき、急に恐怖心が襲ってきて前に進めなくなって、そのまま帰ったこともあったといいます。

 深い縦穴に降ろしたロープにぶら下がる瞬間はいつも、ロープが切れるんじゃないか、と不安に思うそうです。

 それにたくさんの支洞が迷路のようになっている洞窟では時々、迷ってしまうことがあります。

 そうなると緊張感と恐怖心で押しつぶされそうになって、脂汗が出てきます。

 探検家は向こう見ずと思われがちですが、このように実は相当な怖がりです。

 なのに、なぜ洞窟に入るのか、と言えば、そこには素晴らしい世界が待っているからです。

 どのように素晴らしいのか、それを本書で伝えていければと思っているといいます。

 子供の頃はバスで一人で観光鍾乳洞へ行くぐらい洞窟が好きでした。

 そして洞内がライトアップされた観光鍾乳洞でも、ライトアップされていない通路や、これ以上は立ち入り禁止という看板の奥に行ってみたいと思っていました。

 観光鍾乳洞ではない、自然の洞窟に入る機会に恵まれたのは28歳のときでした。

 初めて入ったその洞窟は観光化されてないとはいえ、いま思えば入るのは大変でなく見所も少なかったそうです。

 それでも、洞窟の暗闇の中を進みながらやっと見つかったと思いました。

 目の前は真っ暗なのに、頭の中が明るくひらけた感じがしました。

 自然の洞窟は、大人一人がやっと通ることのできる狭い通路、垂直の縦穴は当たり前です。

 わずかな空間が水に満たされ、地下河川や地底湖になっていることもよくあります。

 そして、暗闇の中には実に変化に富んだ地形が待っていて、洞窟の奥には入口からは想像できない世界が広がり、その景色は到達した者以外は見ることができません。

 そして、洞窟の中を進むためには、スキルが必要です。

 シングルロープテクニックが有名ですが、その他にもスキューバダイビング、ロッククライミング、登山などの技術が役立ちました。

 また土砂や岩で埋没した空間を掘り進むための土木技術として、本業の建設業のスキルが活きました。

 それまでの人生で取り組んできたことすべてが、洞窟探検につながりました。

 国の天然記念物でもある山口県の秋芳洞、世界遺産のアメリカのカールスバッド洞窟や、ヴェトナムのフォッニヤ洞窟などのいわゆる観光洞窟には、一年中、大勢の人が訪れます。

 訪れれば、きっと人それぞれ、洞窟の何かに心が動かされると思います。

 しかし、同じ洞窟に入る行為でも、こうした観光洞窟の奥の観光化されていないところや、まだ誰も入ったことのない未踏の洞窟に入るようなものこそが洞窟探検です。

 日本ではまだあまり馴染みがありませんが、海外とくに欧米ではケイビングというアウトドアスポーツとして人気があります。

 さらに洞窟探検は、スポーツ的な面からだけではなく、学術的にも興味深いものです。

 昔の人の住居跡や絶滅した生き物の化石が残っていたり、目の前の生き物がその洞窟だけの固有種だったりします。

 考古学、地質学、地理学、水文学、古生物学、生物学、人類学など、多種多様な学問と密接な関係にあります。

 ただ穴の中に入って帰ってくるだけではなく、入れば何かしら発見があります。

 現在は、人工衛星のお陰で、奥深いジャングルでさえ容易に空から見ることができる時代です。

 それにほとんどの山は誰かが登り、地表に人類未踏地はないと言っていいかもしれません。

 だとすれば、地球上に残された未踏の世界は、深海か地底のどちらかしかありません。

 深海は、潜水調査船に乗らないと行けません。

 ですから、人の力のみで進む探検家にとって残された唯一の未踏の地は、洞窟なのです。

 地球上の、まだ誰も足を踏み入れたことのない世界を探検するなら、洞窟探検家になる以外に道はありません。

 ただし、探究心は、前に進むための原動力にはなりますが、それだけでは危険を察知して回避したり、戻る適切なタイミングを見誤ってしまいます。

 前に進むのは、探究心が恐怖心に勝っているときであり、逆に恐怖心が探究心を超えたときは、潔く戻ります。

 探検家は冒険家ではなく、臆病なところがあっていいのです。

 そのほうが沈着冷静、用意周到になれるからです。

 おいしいものを食べたい人は、評判のお店や食材に恵まれている土地を調べて、そこをめざします。

 同じように洞窟に入りたい人は、ふつう洞窟がある場所を調べ、現地へ行きます。

 しかし人類未踏の洞窟を探すには、洞窟があるという情報のないエリアほど可能性があるのです。

 最低限必要な情報である、地質と地形の二つを調べて当たりをつけることになります。

 活用するのはインターネットのグーグルアースで、洞窟がありそうな地形を見つけて、次に地質図・地形図と照らし合わせて場所を特定します。

 規模的に大きく、距離も長い洞窟のほとんどは、石灰岩が雨水などに溶かされてできたものです。

 石灰洞窟の場所を見つけるために、当たりをつけたら地質図を机の上に広げ、石灰岩の分布を調べます。

 さらに石灰岩がつくる地形の候補の中でも、地底に洞窟がありそうな地形の場所を地形図で探します。

 専門用語でドリーネと呼ばれている、すり鉢状の地形が理想的です。

 ドリーネは雨水を漏斗のように集め、洞窟を作る原動力となる水を流し込むからです。

 また、地形図上で目をつけるのは、唐突に川がなくなっていて地下に水が流れ込んでいたり、逆に地下から川が流れ出ている場所です。

 とくに断崖絶壁から突然川が始まっている場所は、かなり有望です。

 そうして候補地を絞ったあとは、現地に下調べに行きます。

 現地で得る情報に優るものはありません。

 洞窟探検を、死ぬまでずっと続けたいといいます。

 洞窟探検には終わりがないからです。

 洞窟の探検は、一回行っただけでは終わらないのです。

 数回の探検で洞窟の全容がわかることはなかなかありませんし、探検、測量、撮影など目的ごとに必要な装備があって、これらを一度に実施するのは逆に効率が悪いのです。

 だから、何度も行く必要があり、たとえば第一章で見た霧穴の探検には28年かっています。

 また世界各地で洞窟探検をしたいから、この点でもやっぱり終わりは見えません。

 現在ターゲットにしている洞窟がある国は、日本、中国、ラオス、ミャンマー、メキシコ、タイ、ベトナム、ニュージーフンド、南極、ボリビアなどです。

 この本は、そんな洞窟探検の魅力を伝えるべく、洞窟探検がどういうものなのか、体験したことのない人でもそのプロセスをイメージできるように心がけて書いたといいます。

 もし興味を持って、洞窟探検をしてみたいと思った人がいたら、勝手に洞窟には入らずに、まずは体験ツアーや講習会を実施しているケイビングの団体に連絡してほしいとのことである。

プロローグ洞窟探検への招待/1怖がりの洞窟探検家/2すごい洞窟の見つけ方/3洞窟は危険のかたまり?
第1章大洞窟「霧穴」/1入洞まで/2霧穴が見つかるまで/3ベースキャンプの生活/4まだ見ぬ空間を探して
第2章石灰洞窟と火山洞窟/1沖永良部島・銀水洞/2黒部峡谷の未踏洞窟/3ハワイ・カズムラ洞窟
第3章世界のすごい洞窟/1イラン・3N洞窟/2オーストリア・氷の洞窟群/3メキシコ・ゴロンドリナス洞窟/4ヴェトナム・ソンドン洞窟
第4章未踏の地を探して/1ラオスの未踏洞窟/2中国・万丈坑/3洞窟潜水
特別対談/洞窟壁画の謎に迫る 吉田勝次×五十嵐ジャンヌ/1どんなときに絵を描きたくなるか?/2洞窟壁画の研究法/3洞窟壁画を見つけよう!





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Last updated  2020.06.27 21:43:51
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