沢木遥の「幸せ力をつける練習日記」

沢木遥の「幸せ力をつける練習日記」

2003.07.29
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金にならんことのために動ける若さは嫌いじゃない。
だがな……
五年後に同じことしてなかったら……
アンタ……ニセモノだぜ」
(「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰)




中に入ると、やはりそこは大病院。たくさんの患者が順番を待っていて、つるつるの廊下を、賢そうな医師や看護婦(師)が闊歩していて、いかにも高度医療がいろいろ実施されていそうな雰囲気。このところはまっている漫画「ブラックジャックによろしく」のシーンや台詞が次々と浮かんできて、可笑しいような苦いような気分になった。

「ブラックジャックによろしく」は、いままでの「医者もの」漫画とは一線を画した、画期的な作品だ。主人公の研修医・斉藤英二郎の目を通して、命の現場があますところなく語られる。英二郎は感動したり、悔しがったり、本当によく泣く。ついつい、一緒になって泣いてしまうけれど、この漫画は単なる命を救ってめでたしめでたしの、お涙頂戴お医者様物語、ではない。

物語のなかで、医療行政の矛盾、白い巨塔のかかえるひずみ、医療行為の原罪……日本の医療が抱える数々の深刻な断面が、実にリアルに描き出されるのだ。

これが、我々が病気をしたら、事故を起こしたら、子供にもしものことがあったら、親が危篤になったら、助けてくれると無条件に信じきっているものの正体なのか?

もちろん、一方的に、批判ばかりが書き連ねてあるのではない。
例えば、研究先行、論文先行と批判の高い大学病院で、論文ばかり書いている医者が出て来る。「……でも、彼はその論文で何百万人の命を救った」
という台詞が重なる。
交通事故患者を大量に受け付ける金儲け主義の病院が出てくる。疑問をぶつける英二郎に、

と、同僚医師の言葉がかぶさる。

告知は? 不妊治療は?
抗がん剤の使用は?

いったい、何が正しくて、何が間違っているのか。

そう、この作品では、 「考えろ!」 、と私たちに訴えかけるのだ。
考えるのは、患者となる私たちの責任だ。
日本の医療が悪いと批判するなら、じゃあ、だれがそうしてしまったのか。
自分の命を、大事な人の命を、医師や病院にまかせきりにしてきた私たちの責任もあるのじゃないか。

本来、ジャーナリズムがするべきことじゃないか、と思ったけど、やっぱり、漫画という媒体だからこそできるということもある。ときに、漫画が、新聞やテレビのドキュメンタリーをはるかに超える力を持つことがある。

「ブラックジャックによろしく」は、現在6巻まで出ていて、全部で600万部くらい売れているという。もしかしたら、本当に医療の現場を揺さぶり、風穴を開けることも……、そんな予感さえ感じさせてくれる骨太の作品だ。出会えてよかったと思う。





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Last updated  2003.07.31 09:07:14
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