2005/02/16
XML
カテゴリ: 詩集感想
 川崎洋、石垣りん、鈴木六林男、桂信子と、次々と知った名前が亡くなっていった2004年が終わり、今年も既に一月半が経った。海外の著名文人が幾人か亡くなりはしたが、あまり知らない人たちだから悲しめない。
「詩人も死んでしまうんだ」好きになった詩人は大抵とっくに故人か、永遠に生き続けそうな人たちだったから、川崎洋の死に本当に驚いた。まだそれほど彼の詩には触れていなかったのに。強く詩と私が繋がるには死を介さなければいけないなんて、悪趣味な言葉遊びじゃないか。


『不意の吊橋』より抜粋

仰向いて流れてくるチェロに続いて
俯いて流れてくるチェロ
二体は川上では重なっていただろう
ああ いい



吊橋からはじまって
モノクロが次第にカラーに変わってきた
花々が色々にさざめく
あの花昨日まで名を覚えていたのに
今日はもう忘れている
名という言葉をはずして花そのものを見ていると
悔しまぎれに思ったりする
もう少し年を取れば悔しくなくなるだろう
去っていくのは花の名ばかりではない
どうやら眠っている間に吊橋を渡って行くらしい




 1997年に出版された詩集。お世辞にもあまり出来がいいとは言えない。この頃川崎洋は何歳だったのかと、「川崎洋 生年月日」とGoogleで検索したら 競輪選手の川崎洋さん(33歳) が一番に出てきた。頑張って一着をたくさん取って下さい。気を取り直してただ「川崎洋」と打ち込むと、一ページ目に 見覚えのある自分の日記 が入っていた。以前川崎洋の詩集を読んだ時の感想文が。そんなつもりじゃなかったのに。「不意の吊橋」という言葉が不意に眼に刺さる。吊橋がないことが寂しい。
 1930年1月26日生まれ。収録された詩が書かれたのは90~97年頃。少し生命力が足りないかな、と詩を読みながら思う。中盤の「遊び歌」シリーズの中に眼を見張るようなものはなかったこともある。反対に、突如挟まれるまど・みちおの短い詩の、生臭さには恐怖さえ感じた。1909年11月16日生まれのこの怪物詩人はまだ生きている。


  するめ  まど・みちお

とうとう
やじるにし なって
きいている

うみは
あっちですかと・・・・・・



 この人の詩に本格的に立ち向かう日も、彼の没後になるのだろうか。もしそうならば、もっと先の日であってくれと願う。嫌な予感は文字にはせず、吊橋の下にでも落としておこう。


思潮社  1997年





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005/02/17 02:26:53 AM
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Comments

nobclound@ Vonegollugs &lt;a href= <small> <a href="http://hea…
Wealpismitiep@ adjurponord &lt;a href= <small> <a href="http://ach…
Idiopebib@ touchuserssox used to deliver to an average man. But …
HamyJamefam@ Test Add your comments Your name and &lt;a href=&quot; <small>…
maigrarkBoask@ diblelorNob KOVAL ! why do you only respond to peop…

Profile

村野孝二(コチ)

村野孝二(コチ)

Keyword Search

▼キーワード検索

Archives

2024/12
2024/11
2024/10
2024/09
2024/08

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: