地を這う虫

2024/01/13
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カテゴリ: ジャズ
昨日の深夜にアップした記事で八代亜紀さんのことを少し取り上げました。昨年9月に膠原病の一種であり指定難病である抗 MDA5 抗体陽性皮膚筋炎と急速進行性間質性肺炎を発症し療養中であったが、同年12月30日に亡くなられました。享年73歳とのこと。女性としてはあまりにも早いですねぇ。残念です。合掌。。。


今年の1月4日にアップした↓

今日聴いたレコード "Circle - Circle-1 Live In German Concert"(CBS/Sony - SOPL 19-XJ)

で取り上げたレコードではMulti Reed奏者のAnthony Braxtonのなかなか良い演奏が聴けます。このレコードでAnthony BraxtonはAlto Saxophone, Soprano Saxophone, Flute, Bass Clarinetを吹いています。まぁ、FluteはReed楽器ではないのですが・・・。「なかなか良い演奏」と書いたのは、私の記憶では彼のリーダーアルバムでの演奏にもっと良い演奏があったような気がするからです。そのレコードは持っていないのでJazz喫茶で聴いた時の印象が非常に強かったんでせう。

Multi Reed奏者の草分け的存在でJazzの歴史の中で極めて大きな存在であるEric Dolphyのレコードを久しぶりに聴いてみました。1964年6月2日にオランダで録音された音源です。Eric Dolphyはその27日後の1964年6月29日に糖尿病による心臓発作のため36歳の若さで西ベルリンの病院で亡くなってしまった。
Jazz Manには50歳くらいまでに亡くなる人が少なくないが、ヤク中(Junky)で身体を蝕んだ結果てなことが多いような気がします。データを調べたわけではないので、私の個人的印象に過ぎませんが・・・。
Eric Dolphyは私の知る限りヤク中だったことはないように思います。糖尿病の悪化ということですが、彼が金銭的に恵まれていて適切な治療を早くからちゃんと受けていれば助かっていた命ではないのか、と残念な思いがします。








私の学生時代にはこのレコードの音源がEric Dolphyが生前残した最後のRecordingと言われていましたが、この音源よりも後に録音したTapeが発掘されているようです。今ネットで調べたら、1964年6月11日にParisで録音された音源で、「Last Recordings」というタイトルでレコード化されているようです。私は未だ聴いてはいません。YouTubeにあるかどうか後ほど探してみませう。

で、、、

この「Last Date」の音楽なんですが、Eric Dolphyはどの曲でも非常に素晴らしいです。特に名演奏との誉れ高いB面2曲目の「You Don't Know What Love Is」は私の知る限りJazz Fluteの至高の到達点、天上の音楽と言っても過言ではないです。神がかった名演奏だと思いますよ。このレコードを純粋に音楽として評価すると、Dolphy以外のサイドメンの演奏が私にはしっくりこない面があるので、★★★★☆となります。だけど、歴史的価値を含めて評価すれば★★★★★ですね。勿論のこと。



さきほど、「Dolphy以外のサイドメンの演奏が私にはしっくりこない面がある」と書きました。
この音源はオランダのラジオ放送局が自局のジャズ番組のためにスタジオで録音したものです。スタジオ関係者他をスタジオに入れたスタジオ・ライブなので演奏が終わると聴衆の拍手が入ります、聴いた感じでは10人いるかいないかくらいです。で、録音、ミキシングの関係で妙に残響音があり、4人の演奏者個々がすごく離れて演奏している感があり、どこか「冷気」を感じてしまうんですね。その「冷気」は録音だけに起因するんではなく、白人のサイドメンの演奏に粘っこいビートが感じられない事も強く影響している気がします。Dolphy自身はサイドメン3人の演奏を気に入っていて、このスタジオ録音以降も一緒に演奏する約束をしていたらしいですが、私はあんまり気に入りません(苦笑
Misja MengelbergのPianoは独特の白人臭いアドリブラインだし、Han BenninkのDrumsは白人っぽい、わずかに前ノリ気味でスタジオの妙な残響音(反響音といった方が適当かも?)とも相まって「冷気」を感じてしまうんですね。

ネットでちょこっと調べると、この音源はmonaural録音らしく、1964年リリース蘭Fontnaのオリジナル盤はmonaural盤のようです。蘭Fontanaから1964年にstereo盤もリリースされていて、こちらは疑似stereo盤のようです(汗

知らなんだ!

オーディオマニアさんのブログでは「B2 You Don't Know What Love Is」のみは疑似でないまともなstero録音ではないか?と考察されている人もいますた。先述した妙な残響音(or 反響音)とか、Drumsのシンバル音が妙にシャリシャリ、チリチリして歪っぽい、安っぽい音質なのは疑似stero化するために位相操作をしたためではなか、との考察も書いてありました。はは~~~ん。そう言われればそうなんか、とは思います。

ただ大きな疑問は、さきほどDiscogsで調べた結果、日本で制作されたCDにはmonaural版(盤)は1991年以降リリースされていません。Stereo版(盤)は1991年以降に10ヴァージョン以上リリースされています。オリジナル盤信仰、monaural信仰が強い日本でmonaural版CDがリリースされていないのは不思議ですねぇ。状況証拠的にはラジオ放送用の録音だけどmonauralにもstereoにも対応できるように録音されていた可能性は排除できないような気もします。あと考えられるのはmonauralマスターテープの紛失や劣化が酷くて使い物にならない、てな事情があるのかもしれませんね。

ただまぁ、1991年にmonauralでCD化されているんだから、疑似stereoよりmonauralの音質が明らかに上質なんであれば、極端な話、リリース済みのCDをマスター音源として再販するのもありでしょ。そのあたりの事情はユーザーに開示した上でですが・・・。

大事なこと書くのを忘れてた。B面の最後の曲「Miss Ann」の演奏が終わり聴衆の拍手が終わった後、Eric Dolphyの有名な言葉が本人の声で流れます。この言葉は「Miss Ann」演奏後の言葉ではなく、別の機会にラジオ局が収録していたインタビューでの音声らしいです。その言葉は

“When music is over, it's gone in the air. You can never capture it again.”

演奏された音楽そのものは空間に確かに消えてしまう。物理的に正確に書けば音は空気中を伝搬していくので、演奏者に聴こえなくなった音楽は遠く離れた聴衆の耳元にどんどん伝わっていき、伝搬経路中の媒質である空気の音響吸収が仮にゼロであれば、1km先の聴衆に1000m/340m=約3秒後に届きます。5000m先の聴衆には5000m/340m=約15秒後に届きます。現実には空気の音響吸収があるため、伝搬途中に熱エネルギーに変換されて「音は消えてしまいます」。

 ※1000m先、5000m先でEric Dolphyの演奏、音楽を聴くためには、他の音(自動車の音など)が全く存在しないことが必要ですよ。まぁ、5000m先では距離による減衰や他の色んな減衰があるので現実問題それでも難しいんですけどね。



【2024/01/13 22:19 追記・挿入】


上記のEric Dolphyの有名な言葉については、私の所有盤の油井正一氏のジャケット裏面記載の解説文でもネットで見たいくつかのブログ記事でも it's gone in the air を「音楽は消えてしまう」という訳文が書いてあります。何も考えずに、私はその訳文に引っ張られて、上の文章を書いています。

そうじゃないんですよ。Eric Dolphyは「音楽は消えてしまう」とは言ってないんですね!。  it's gone in the air  と言ってるんですね。聴衆の貴方の耳の横を通り過ぎてどんどん gone in the air していくと言ってるんですね。音楽は消えてないけど、貴方の耳の横を通り過ぎていってしまうので、貴方は  never capture it again  と言ってるんですね。物理的に極めて正確な言葉なんですね。凄いですね。

Eric Dolphyは毒舌家で知られる高名なJazz BassistのCharles Mingusをして



と言わせるほどの人格者だったようです。

そういう人格者であり、Multi Reed奏者として前人未到の領域に足を踏み入れ素晴らしい音楽で半世紀以上経過した今も我々を楽しませてくれる彼が、物理学的頭脳も極めて明晰であったことがわかりますた。いや~~、凄い男ですね。かえすがえすも36歳で早逝したのが残念でなりません。




今から60年前にオランダのラジオ局のスタジオで演奏された歴史的名演奏をレコードやCDでいつでも自宅で楽しめます。Dolphyの言葉の真の意味を考えながら聴かないとDolphyに失礼かもしれませんね。。。


Discogs記載の情報を適宜編集して以下に貼っておきます。

あ~~~、私は2003年リリースのstereo版CDも持っています。そのCDとレコードを同時再生してアンプの入力切替をPhonoとCDを切り替えて聴き比べてみました。レコード再生には高出力MMカートリッジの中電MG-3675を使いましたが、それでもCDプレイヤーからの再生音の方が数dB以上大きいので、入力を切り替えた瞬間は音量差(音圧差)の影響が避けられないので比較は難しいのですが、概ね同じ音ですた。中電MG-3675は1万円前後の廉価なカートリッジなのでBassの低音などはCDプレイヤーの再生音の方が締まっており、多少高音質だった気がします。








日本盤のmonauralCDはメルカリで800円前後くらいで購入できるようなので、500円くらいまで値下がりしたら買ってみますかねぇ~~。




Eric Dolphy - Last Date

レーベル: Fontana - PAT-1051, Limelight - PAT-1051
シリーズ: '75 Attention! 完全限定 \1,300
フォーマット: レコード, LP, Album, Limited Edition, Reissue, Stereo
国: Japan
リリース済み: 1974








収録曲
A1 Epistrophy
   Written-By - K. Clark*, T. Monk*    11:15
A2 South Street Exit
   Written-By - E. Dolphy*        7:10
A3 The Madrig Speaks, The Panther Walks
   Written-By - E. Dolphy*        4:50
B1 Hypochristmutreefuzz
   Written-By - M. Mengelberg*      5:25
B2 You Don't Know What Love Is
   Written-By - D. Raye*, G. DePaul*   11:20
B3 Miss Ann
   Written-By - E. Dolphy*        5:25

クレジット
Bass - Jacques Schols
Drums - Han Bennink
Flute, Bass Clarinet, Alto Saxophone - Eric Dolphy
Illustration - Z. Jastrzebski*
Liner Notes - 油井正一*
Piano - Misja Mengelberg*

ノート
Limited Reissue With Obi. Full Description On Cover Back.

Recorded June 2, 1964, Hilversum, Holland.

"Producer: Radio Jazz Club, Co-producer: Jazz Magazine"




ジャズを聴き慣れていない方、多少Jazzを聴いてはいるが「馬のいななき」のようなDolphyのバスクラリネットはちょっと聴けないなぁ~~、勘弁して欲しい、って方に是非とも聴いていただきたいフルートの至極の名演奏が「You Don't Know What Love Is」です。

名古屋のジャズ喫茶のマスターが少しだけ解説している動画は↓
"ジャズ喫茶バリレラ オススメの1曲 No.692 Eric Dolphy 「You Don't Know What Love Is」"


純粋に音楽だけに浸り人はこちらをお薦めします。
"You Don't Know What Love Is - Eric Dolphy"


フルアルバムは↓
"Last Date"



"Last Recordings" からニ曲↓

"Springtime"


"GW"


Monaural盤の「B3 Miss Ann」↓だけど動画アップ主さんの再生装置の音色、部屋の音響特性が加味された音なので、聴いても音の善し悪しを判断することは全くできません(苦笑)。JBLの中型ブックシェルフSPは床へのほぼ直置きですが、50~100センチ程度のスタンドを利用して床から離す方がよかと思いますけどね~~。よう知らんけど・・・😅😓

""Miss Ann", Eric Dolphy / Last Date, 1964, Fontana 681 008 ZL, 1st press, Mono"


蘭FontanaのMonaural盤のライン出力をYouTubeにアップしてくれてるっぽいのがありますた↓
時間取れる時にじっくり聴いてみませう。

"Last Date / Eric Dolphy sideA"


"Last Date / Eric Dolphy side B"





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Last updated  2024/01/14 01:44:53 AM
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