K社は、ある大手企業系列の中堅企業としてバブル崩壊頃までは順調に発展してきました。しかし、円高で輸出にブレーキがかかり、親会社が海外に拠点を移したのに伴なって受注は激減、親会社に追随する形で、東南アジアに進出したのです。しぼらくは、K社の海外事業も順調でしたが、現地の人件費が上がるにつれ、業績も急に悪化し始めました。
それに、製造業の将来に不安を抱いたK社では、他社に後れをとらぬように、財テクを手がけ始めていたのですが、バブル崩壊後、地価下落、円安のあおりを受けて、多額の含み損、不良債権を抱えることになってしまいました。
つまり、大手の傘下で、ぬくぬくとやってきたK社は、親会社の傘の下から離れては何もできない体質がしみついていたのです。
K社の首脳陣は、いろいろな対策、戦略を考え、実施してきましたが、何一つうまく行きませんでした。それは、企業としてのK社を、自分たちの立場を、
・ありのままに見ること
ができなかったために外なりません。
ありのままに見れば、K社のアイデンティティをはっきりすることもできますし、どういう路線をとるべきかもはっきり見えてきたはずです。
K社に限らず、これまでの路線が忘れられず、業績不振、低迷にあえいでいる会社、商店は、数多く存在するように思われます。
これまでの路線にしがみついている限り、道は開けないでしょう。
ありのままに見ることができれば、K社の場合も、これまで、いかに親会社に依存してきたか。他社に追随してきたか。ここへきて、その手が通用しなくなったのはなぜか。そうだとすれば、どこへ、活路を求めるべきか、が次第に見えてくるはずです。
これまで、規制や既得権の下に、手厚く保護されてきた業界、企業が、軒並み苦渋を味わっていることは何とも皮肉なことです。
米、牛肉、酒類、金融、漁業などがこれに含まれるでしょう。デパートも近年ジリ貧状態ですし、中小の小売店も大型店、コンビニエンス・ストアに押されて存続の基盤を脅かされています。
国家公務員、地方公務員、大手企業のビジネスマンも終身雇用、年功序列に守られて、比較的安泰でした。
これからは、そうは行かないでしょう。
あらゆる業界、あらゆる分野の人たちが、今、ありのままに、自分を見つめることによって、自分の展望が開ける――そういう時代になったといってよいでしょう。それができない会社や人はますます苦境に立たされることになるのです。
PR