不毛21 「破壊は愚かで不毛」と教えよう
表面だけでなく「水面下」にも目を向ける
問題解決、すなわち不都合なことを望ましい形に変えるだけでなく、現状をさらによりよい方向に向ける、新しい付加価値を生み出す ――
そこで、アイデア、独創性が必要になってきます。
そのためには、現状がかなりうまく行っているように見えても「これでいいのだ」とそれにドップリ浸っているようではだめなのであって、常によりよい方向、形を模索する姿勢が必要です。
今は、うまく行っているように見えても、こちらが、ジッとしている間に、環境が変わって、いつの間にかすっかりおくれをとっていた、ということもあるからです。それは、現状に不満をもつということではなく、現状にはある程度満足しつつ、よりよい方向を探る ――
これがプラス思考です。
現状に不満をもってブツブツ文句をいい、周りを批判、攻撃するのは、マイナス思考です。
ある営業所で、A所長が「現状はうまく行っている」と満足していました。確かに、売上も利益も上がっているし、人間関係もうまく行っていたので、「何もしないでいい」と、タカをくくっていました。ところが、それから一年もしないうちに、競合他社の大攻勢が表面化し、アッという間に業績は落ち込んでしまいました。それに、業績が落ち込むと、お互いに責任のなすり合いが始まり、人間関係まで悪くなり、相次いで辞職者が出始めたのです。A所長は、慌ててあれこれ手を打ちましたが、いっこうに効果はなく、本社から新所長が着任し、Aさんは次長に格下げされてしまいました。
Aさんが、「これでいい」と思っていた頃、ライバルは、ひそかにユーザーの開拓を進めていたのに、Aさんはそれを知らなかったのです。また、職場での人間関係も、スポーツや趣味のサークルが活発だったので、うまく行っているように見えたのですが、実は、一皮むけば、代金回収のトラブルや売上の着服など目を覆うほどの惨状でした。つまり、気がつかないで「これでいい」と思っていたのは、A所長だけだったのです。
こういうことは、あちこちの職場でありがちなので、管理者の方は十分注意が必要です。
ものごとは表面だけ見ていたのではなかなかわからないものです。水面下にあるものを読みとる「洞察力」が必要です。
心の温かさが感じられる環境を育てよう
ところで、このような問題を未然に発見したり、現状をよりよくする
・問題発見・解決の能力
は「創造性」と一体です。
そして「創造」のアンチテーゼは、「破壊」です。
ものごとを解決する方法としてもっとも愚かで、悲劇的なやり方は、暴力による破壊で、それが私利私欲に結びつくと犯罪、ゲリラとなり、国家権力と結びつくと侵略、戦争ということになります。
こういうやり方が、平和、幸せを生むはずがないことは自明です。
破壊ではないにしても、権力や金による解決法も、「創造」とは相入れないものです。日本では戦後、あの愚かな戦争への反省から、さすがに暴力による解決は少なくなりましたが、何か国際紛争や問題が起きると、金で解決しようとする姿勢は諸外国の批判の的となりました。
暴力でも金でもなく、創造的にものごとを解決するということは、なかなか困難に思われます。
たとえば、どろぼうに入られてから縄をなう、いわゆる「泥縄」というようなやり方ではなかなかうまく行きません。へたをすると、生命まで危うくなります。
やはり賢明なのは、転ばぬ先の杖、どろぼうに入られないようにすることです。
かつては、貧富の差が大きいこと、そして貧困こそが犯罪の原因と考えられました。しかし、経済的には豊かになったはずのアメリカや日本で、ますます凶悪、陰湿な犯罪がふえているということは、貧困だけが犯罪の原因とはいえない証拠です。非行少年や犯罪者の中には、かなり裕福な中流以上の、場合によっては富豪や政治家の一族であるという事実は何を物語っているのでしょうか。
「素質」に原因があるのか、「環境」が悪かったのか。おそらく、その両方が複合的にからんでいるものと思われます。
人間性心理学(マズロー)の見解では、育った家庭の「文化的環境」が低かったと考えます。お金はあっても心の冷たい家庭、精神的孤独の中から犯罪者は生まれやすいのです。
私たちは、家庭や地球や職場の中から、温かい心のふれ合いを育てて行くことが大切です。そして、
・破壊は愚かで、不毛であることを教え、創造性を育てる努力をすべきなのです。
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