22 どうすれば、創造性が育つか
楽しみながら、問題意識をもつ
それでは、創造性を育てるには、どうすればよいのでしょうか。
再三いっているように、素直な気持で周りと自分をありのままに見ることが、ものごとに気づき、それを建設的、創造的に解決するコツです。
いい換えれば、偏ったものの見方、考え方を捨てることです。その第一歩は、自己中心のワナから自分を解放することです。これについては前にも述べたとおりです(14項)。
自己中心の考え方だと、モノが売れないばかりでなく、発想が偏って、貧弱な企画しかできません。
ここから脱皮するには、いろいろなことに「関心」をもち、
・あれは何だろう。なぜ、うまく行く(行かない)のだろう。
・どうして、忙しいのか、迷惑をかけていることはないか。それを何とか改善できないかと、いつも問題意識をもって行動することです。それも、強制されてやっているという追い詰められた意識でなく、「楽しみながら、モノを見たり、考えたり、行動すること」が大切です。
発明、発見をモノにした人は、そういう意識で行動していることが多いのです。また、はじめに目ざしていた目的はモノにならなかったのに、もっと大きな発明ができたというケース、ついでに出てきたものが、実は、大発明に結びついたことが多いのです。
ペニシリン、ナイロンなどは、副産物のたまものといわれていますし、グラハム・ベルの電話も、ろう唖者の指導というテーマから声を電気信号にかえるという発想が生まれ、そこから生まれたといわれています。アメリカ大陸の発見も黄金の国日本、そしてインドをめざして、偶然にたどり着いた結果と伝えられています。
そんな大発見、大発明でなく、私たちの人生や日常生活においても、素直な気持で、問題意識をもつこと。そして、
・仮説を立て、アクションを起こしてみること
が、何より大切です。
次に、私が脱サラしていた頃の「気づき」についてお話ししましょう。
脱サラしたものの、仕事がなくて、私は戸惑っていました。幸い、営業力抜群のOさんとふとしたキッカケで知り合い、Oさんがいろいろ顧客開拓のコツを教え、実際にいくつか仕事の口も見つけてくれました。
第四法則発見への道
しかし、何しろ、Oさんも本業が忙しく、いつまでもOさんに頼るわけには行かず、私も自立することが必要でした。Oさんは、飛び込みセールスの天才で、私もOさんに習って自分のユーザー開拓にドア・ツー・ドア・セールスに歩きました。
少しずつは、受注に結びつきそうになるのですが、どうも、キメ手に欠けます。
そうしているうちに、私は、次のように考え始めました。
・Oさんのやり方では、どうしてもOさんにかなわない。では、私は、Oさん以上にはなれないのか。確かに、Oさんの真似をしているだけではOさんを凌ぐことができないのは明らかである。
少し、意気消沈していたころ、素直な気持になって瞑想してみました。
すると、私は、ふと、
・あることに「気づいた」
のでした。それは
――
私は、Oさんのやり方ではOさんにはかなわない。だが、彼も人なり、我も人なり。私にはできるが、Oさんには、できないこともあるはずだ。それは何か
――
それが、私のライフ・ワークの発見
・モノを書いて、人々に読んでもらうこと
・講演を通じて、いろいろな人に話しかけて行くこと
だったのです。このことに気づいてからは、私の道は、順調に開け始めました。
私は、自分のPIを発見、確立することに成功しましたが、同時に、それは私にないOさんはじめ周りの関係者のPI、個性に対する敬意を再認識することになりました。
今なお、Oさんとは、ことあるごとにパートナーシップを発揮し助け合い、励まし合っています。
それは、一方が他方に頼るという関係でなく、それぞれが独立を確保したうえで、お互いの個性、能力を尊重し、補い合うという関係です。
その前提になったのは、
・自分自身をよく知り、他人をよりよく理解すること
でした。
「自分を見失わないで」幸せになれる五大法則の第四法則は、「自分を知り、大切にすること」です。これを次章でとりあげます。
〔第三章のまとめ〕
・この章では「自分を見失わないで」幸せになれる第二法則「自立」についてとりあげた。
・要領よく、責任逃れをして生きた方が出世、成功、幸福への近道と考える人もいるだろうが、マズローによれば、
・「社会的に責任ある行動は、自然で健康で、報いられる。責任ある行動をとらないと、基本的な心理的欲求を満足させることはできない。無責任な行動は、長期的には害を及ぼす」と述べています。
・最近の相次ぐ官民の癒着や不祥事で、このマズローの主張が立証されている。明るみに出ないで、追及を免れた人々は、得をしたように見える。しかし、人は、基本的に「良心」をもっている。良心の苛責に苦しめば、追及を免れても、精神的葛藤がある。少なくとも、責任ある行動をとり、堂々と生きている人の満たされた気持にくらべたらお寒い限りである。
・犯罪者がつかまらず、良心の苛責に悩まされ自首をしたという話は、マズローや私たちの考えを裏付けるものである。
・フロイト派、行動主義者によれば、人間は本能、動物的衝動で動かされているのだから、無責任な行動をとっても苦しむことはない。が、問題は、あなたがそういう種類の人間かどうか。無責任な行動をとった場合、心理的葛藤はどうかということである。もし、少しでも葛藤があるなら、無責任な行動はとるべきではない。
・大ていの社会人は、経済的に自立しているが、表面的には自立しているように見えて、なれ合い、依存の体質の中では精神的自立はできにくい。
・日本の社会では、精神的自立をしようとすると疎外され、村八分になることを覚悟しなければならないこともあった。
・協調性は必要だが、これも、時と場合によりけりであり、程度問題でもある。
・何でも「おまかせ」ではいけない。
・日本の若者は、考える力がないという指摘もある。
・偏差値、結果だけを求める社会の風潮があり、新しい問題にチャレンジし、工夫する能力のある人材を育てる姿勢が日本の社会にはなかった。これからは、
・クリエイティブで、工夫のできる人材を育てる心構えが必要。
・日本の社会で、「結果」だけを求めるようになったのは、行動主義の影響が色濃い。彼らの考え方は、人間をモルモット視し、人間の意思や尊厳、責任能力は軽視する傾向があるからだ。
・血が流れていても、ロボットのような人間が多くなり、そういう人が世の中を動かす社会 ――
これは恐ろしいことだ。
・今こそ、一人ひとりが自分の考えをもち「考える力」をもつことが必要。
・自立していない企業、個人は意外に多い。
・会社はCI、個人はPIをもつべきだ。
・今、どこの行政機関も企業も行き詰まりが見られ、「自発的にモノを考え、行動できる創造的人材」が必要とされるようになった。
・自分で自分の問題が何かわからないという人は、自発性、創造性のない人である。
・受け身の生き方から生きがいは生まれない。
・何が問題か「気づく」のが先決。
・問題とは、理想、望ましい姿と、現実とのギャップをさす。
・理想と現実とのギャップが大きくても、あきらめてはいけない。
・できない理由より、できるようにするにはどうするかに知恵をしぼれ。
・何ごとも、真剣に取り組むところから、問題への「気づき」も得られ、解決策の突破口も見つかる可能性が出てくる。
・マイナス思考からプラス思考への転換が、創造性を生み出す。
・先入観を捨て、素直な気持でモノを見れば、創造性の芽は育ち、感性は鋭くなる。
・問題の解決を暴力や金ではかろうとするやり方は、破壊、不毛を意味する。
・プラス思考とは、ものごとを建設的に考え、対立する考え方の調和をはかり、接点を求めようとする態度である。
・「問題はない」ように見えるところにも、かくれた問題が潜在的に進んでいて、気がついた時には手遅れということもある。水面下のかくれた問題にも目を向け、発見する「洞察力」が必要である。
・貧しさが犯罪や暴力の元凶とはいえない。経済的に豊かでも、文化的、精神的に貧しい環境から、非行や犯罪が生まれることが多い。
・家庭、地域、職場で温かい心のふれ合いを育てて行くこと。
・楽しみながら問題意識をもつところから創造性が育つ。ことを意欲的にやっても、失敗すると減点になる。それなら、何も手を出さず、黙っていた方が、減点が少なく、早く出世できる」という風潮が、あらゆる組織に蔓延したのだと思います。
しかし、そういう生き方からは生きがいは生まれてきません。
自立するためには、自発的にものを考え、行動することが必要です。自発的に行動すれば、独創性、アイデアも生まれ、そこからは生きがい、やりがいも生まれてくるでしょう。職場内外の問題を解決するためだけでなく、おもしろく、生きがいのある人生を過ごすためにも、自立、自発は、不可欠なのです。
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