【クインシー・ジョーンズの近況】
クインシー・ジョーンズの新譜は長い間遠ざかっているが、彼の長いキャリアを振り返る企画盤はCDショップを常に賑わせている。 プロデューサーとしての活動も最近ではあまりニュースにならないところを見ると、年齢的なこともあり活動のインターバルが長引くのもやむを得ないのだろうか? 【このアルバムについて】
1981年に発売されたこのアルバムは、前作の「スタッフ・ライク・ザット」から3年のインターバルの後に発売された。前作も私のお気に入り盤で甲乙を付けがたい名作である。 本作ではクインシーの広い顔を生かして多くの著名ミュージシャンやスタッフが集結した。アルバムの邦題は1曲目の Ai No Corrida(愛のコリーダ)
で、これをリアル・タイムで聴いていた私としては連日FMでオンエアされていたのをはっきりと記憶している。最近では山田優ちゃんがカナダ・ドライのジンジャーエールのCMで、つるはしを担いでいるバックに流れている曲なので注意して聴いて欲しい。1曲目らしく当時流行のディスコ・ビートが利いてリズム感抜群の曲で、これで一気にグッとリスナーをひきつける。 2曲目はこのアルバムの原題である The Dude
はクインシーの秘蔵っ子ジェームス・イングラムの低音のヴォーカルと、クインシーやマイケル・ジャクソンやパティ・オースティンらのバック・ヴォーカル隊が絡む曲。 ジェームス・イングラムのヴォーカルがフィーチャーされているのは、他に3曲目の Just Once
One Hundred Ways
でどちらも美しいバラードだ。後者はグラミー賞の最優秀R&Bヴォーカル賞を授賞している。 パティ・オースティンのヴォーカルがフィーチャーされている曲は、4,5,6,9曲目の合計4曲で、それ以外の曲でもバック・ヴォーカルで絡んでいてジェームス・イングラムの男性らしいヴォーカルと対をなしてアルバムに華やかさを加えている。 唯一インスト・ナンバーの8曲目 Velas
はクインシーの盟友であるトゥーツ・シールマンスのギターとハーモニカと口笛がいい味を出している。このアルバムの中でもっとも「ホッと」出来るナンバーで、ジャズの雰囲気を醸し出している。 曲作りでは2、5,6,9曲目でロッド・テンパートンが参加しているが、クインシーと彼のコンビは当時多くの曲を取り上げている。マイケル・ジャクソンのアルバムにも多く提供していて、アルバム「オフ・ザ・ウォール」「スリラー」ではそれぞれのタイトル曲を含む6曲を提供している。『ロック・ウィズ・ユー』『スリラー』は彼の曲だということをご存知だろうか?他にはパティ・オースティンがヴォーカルを取る4曲目の Betcha‘ Wouldn’t Hurt Me
では、スティーヴィー・ワンダーがステファニー・アンドリュースとの共作で曲を提供している。 【参加アーティスト】
クインシーのアルバムには彼の幅広い人脈を証明するかの如く、超一流がフィールドを越えて参加した。スティーヴィー・ワンダー、ハービー・ハンコック、スティーヴ・ルカサー、デヴィッド・フォスター、マイケル・ジャクソン、アーニー・ワッツ、グレッグ・フィリンゲンズ、ルイス・ジョンソン、エイブ・ラボリエルなどまだまだ書ききれないほどの人たちがこのアルバム制作に関わった。