madamkaseのトルコ行進曲

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marnon1104 @ お久し振りです (。≧ω≦)ノ!! kaseさんのお誕生日だったのですね。 お元…
marnon1104 @ Re:2018年の写真を使ってブログ復旧の試し書きをしています。(02/04) うわぁ~♪kaseさんだぁ~♪ お写真を拝見し…
marnon1104 @ Re:トルコでシュウマイはいかがですか?(07/08) kaseさん、こんにちは(*'▽')♪ …
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madamkase @ Re:渡航記念日(03/16) marnon1104さん、こんにちわ。 3月に書い…
madamkase @ Re:トルコでシュウマイはいかがですか?(07/08) ひなのさん、おひさしぶりです。 トルコは…
2010年01月15日
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カテゴリ: 旅に出て人と会う



 次の朝(2009年12月17日)は祈りが通じたか好天で、9時過ぎ、ショコラさんから部屋にいる私に電話がかかってきた。
 無事到着、地下1階の朝食サロンでお待ちしてます、というので、私もすぐに降りて行き、初対面のミントさんに紹介して貰った。

 この時期いつもうろついている私はともかく、突然日本人の気品ある淑女2人が登場したので、ほぼ満員の朝食サロンの目がこちらに集まった。
 アヌ・ホテルの朝食はまあ、月並みなのだが、まかないのヌルさんが作るヌードル入りのエゾ・ゲリン・チョルバスというスープがとろりとしていて美味しく、2人もご満悦でまずは私も安堵した。

 メヴラーナの命日を記念するシェビィ・アルースは、2009年で736回目となる。
トルコが共和国になったあとの一時期、うぞうむぞうの宗教団体が解散させられたあおりで、メヴラーナを始祖とするメヴレヴィー教団も解散の憂き目に遭ったが、その後重要文化財として国の保護下に入り、今日の隆盛を見ている。

 ショコラさんもミントさんもコンヤには初めてなので、午後セマーの儀式を見たあと、メヴラーナ博物館、翌日にはカラタイ博物館、アラーエッディン・モスク、インジェ・ミナーレ博物館などを私が案内する約束だった。

 小春日和と言ってもいいくらいの陽気に恵まれ、私達は街に出た。
 東にあるアラーエッディンの丘と西のメヴラーナ博物館を結ぶ大通り沿いには県庁もあるが、その付近はイスタンブールのスルタンアフメットと同じように旧市街ともいえる一画で、チャルシュ(商店街)は入り組んだ小路に小売店が軒を連ね常に賑わっている。

 しかし、大コンヤ市の中心は確実に北部に移動している。イスタンブールのように起伏の激しい地形ではなく、トルコ語で言う「デュンデュズ(真っ平ら)」で、とてつもない広さの大平原、それを大きなお盆のように周囲を小高い山々が取り囲んでいる、というところなのである。市の北部の、ただの荒地だったところに、高層マンションが林立、開発・近代化が猛スピードで進行している。

 私達は旧市街、メヴラーナ大通り沿いの店々のウィンドーを覗きながら歩き、エルドアン・エロル博士との待ち合わせ場所にもしているキリム問屋カラヴァンの前に差し掛かった。
 ちょうど博士も、タクシーのアブデュラーさんもそこにいたので寄り込み、社長のアスムさんとも談笑、そのあとキリムを見せて貰って目を肥やし、2人もぜひ食べたかったというコンヤ・エトゥリ・エクメッキをご馳走になった。 ラッキー!


3人でお昼
どこから取り寄せるのか、とびきり美味しいコンヤ・エトゥリ・エクメッキ。
(失礼、美女2人にマスクをかけてしまったので食べられませんね)


 やがて時刻は午後1時を回り、腹ごなしに歩いてセマーの会場に行った。男女別々にセキュリティ・ゲートを通す、というのが分からない。銭湯じゃあるまいし、中に入ればどうせ一緒になるのに、しかも昼間は女性の数が圧倒的に多いので片方は押すな押すなで揉み合っているのに、もう一方の男性側はめったに通る人もいないので、ガードマンが暇そうだ。

「これでは列の後ろのほうは開幕時間になっても入れない人が続出しますよ。私達はこちらのゲートをくぐります」と職員に言って幾人かが男性用をくぐった。私達もそれに続いて男性用から・・・でも、どこが違うんじゃい。

 毎年毎回、このセキュリティ・ゲートから入場するにはひと悶着あるのだった。

 2009年は12月7日からメヴラーナ週間が始まったが、セマー会場のメヴラーナ文化センターが完成した2003年以降6年間は、12月1日から17日のフィナーレまで毎日公開されてきた。しかし期間が長すぎて観客が動員できず短縮されたのだそうだ。

 予約したとき、こちらから円形の観客席の場所を指定したので、いつものように楽団を正面に見、ポストニシン様が座る後ろ側にあたるブロックだった。
 開幕の少し前に席に着き、両脇の2人にセマーやその前の独唱、ネイ(葦笛)独奏について簡単に説明し、場内が暗くなり、いよいよ式典が始まった。


 学者がメヴラーナについて一くさり語ったあと、例年通りメヴラーナ歌手といわれるアフメット・オズハンのコンサートがあり、最後に厳粛な雰囲気のうちにセマーが始まった。
 赤い毛皮(メヴラーナの地位を象徴する)を抱えて若い修行者が指定の位置におき、セマーゼンが7~8人入場、最後にポストニシン様が登場する。

セマー 1セマー2セマー 3
赤い毛皮が運ばれ、うやうやしく中央に置かれる。静々とポストニシン様が登場する。

天空を表す天井ポストニシン
無限の天空・星空を表す天井    そしてポストニシン様が着座する


 神と預言者ムハンメッドとメヴラーナを讃える歌を独唱するアリ・カライジャさんの、耳や胸のみならず血管にまで浸み込んでくるような美声、ネイのものぐるおしい悲壮な音色、そして10人ほどで3回繰り返されるスルタン・ヴェレドの旋回。


セマー 4セマー 5セマー 6
厳粛な雰囲気の中、スルタン・ヴェレドの旋回、といわれる儀式。


 やがて20人ほどのセマーゼンがさらに加わり、あの限りなく神秘的な旋回舞踏が楽にのって4節に分けて繰り返された。

セマー 8
黒衣を脱ぎ捨て、舞踏を始めるためにポストニシンの許しを得るところ

セマー 7
全員揃って回り始めたセマーゼン達

セマー 9
セマーの終盤、4回目の旋回ではポストニシン、セマーゼン・バシュも
懐を広げ、一緒に回りつつセマーゼン達のために神の加護を願う



 ショコラさんもミントさんもデジカメを動画モードにして追い続ける。2人にとって初めて見るセマーは大きな感動だったようである。

 興奮が覚めやらぬうちに、私達はメヴラーナ博物館に向かった。途中のインフォメーションに立ち寄り、日本語版のパンフレット類やCDを貰った。
 ユジェル君はまた別な国のVIPの案内に出ているとのことで2人に紹介することは出来なかった。

 メヴラーナ博物館では期間中入場無料の大盤振る舞い、私達はショールやスカーフを被って中に入り、メヴラーナに祈りを捧げた。
 聞きかじりの知識で2人に大まかに説明し外に出たとき、私の目は出口の脇にいた1匹の白黒猫に釘付けになってしまった。

猫 1

「あらやだ、ショコラさん、見て見て。こんなところに猫の剥製が置いてあるわ」
 見れば見るほどその猫は剥製に似ていた。

「加瀬さん、その猫、生きてますよ」
「うそ! だって動かないじゃない」
「上に何かいるのかしら。それを見ているんじゃないですか?」

猫 2

 私はしまいこんであったカメラを慌ててまた取り出した。もどかしい思いで袋から出し、眼鏡もかけ直した。それでも猫はまったく動かず虚空の一点を見つめているように見える。

猫 3

 うちのアルスのような顔つきのもう少し大きな猫だった。そばによって写真を2、3枚写しても凍ったように動かない。それは上手な剥製のように見えたが、考えてみるとなんでこんなところに猫の剥製が? 
 いくらメヴラーナが猫を好きだったらしいとしても、関連性がまるでない。

猫 4

「上に鳥がいるみたいですよ」とショコラさんが言った。

 と、次の瞬間、猫は目にも留まらぬ速さで脇にあったベンチに飛び乗り、そこから窓の鉄格子に横っ飛びに大ジャンプして、するすると音もなく登り始めたのである。

猫 5

 「ひぃ~っ、生きてた~っ」と私は思わず口走った。

猫 6
写真右上の黒い横桟の隅に鳩が1羽留まっていた!


 アルスによく似た猫は、じいっと鳩を狙っていたのだった。それにしても私の、かつては2.0の視力を誇った目も、老眼もいいところで、目の前にいる生きた猫を剥製だと思い込むなんて、すっかりとぼけてしまったらしい・・・

 猫の突然の大ジャンプがどうにも信じられない思いで首をひねりながら、私はメヴラーナ博物館を離れ、2人を隣の敷地にあるレストランに案内した。もちろん、ディシュ・キラスつきの、あの店に。


まあ、驚くにはあたらない。コンヤから戻った私は、わが家のシェビィとアルスの大ジャンプやカーテン登りを毎日見て暮らすことになったからである。








犬と三日月 イスタンブールの7年 」(新宿書房)










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Last updated  2010年01月15日 20時02分26秒
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