まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2005.03.30
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カテゴリ: 不機嫌なジーン
ほとぼりも冷めてきましたが、


こういうドラマが好きで、放っておけなくて。(~~;



◇  ◇  ◇



南原教授と仁子ちゃんは一緒になりませんでした。

2人のズレが決定的になったのは、
けっきょく有明の「干拓問題」でした。

このドラマ、やっぱり“エコ=ドラマ”だったから。



南原教授が、

仁子ちゃんの気持ちは激しく揺れました。

もちろん、そのことで、
南原教授を責めようとしたわけでもないし、
彼を許せないと思ったわけでもないんだけど、

ただ、それを知って以来、心のどこかで、
言葉にならない「不安」みたいなものが、
仁子ちゃんの中にとどこおってしまったんだと思う。




前日の日記に、

>地球が滅んでも「小さな幸せ」を選ぼうとする男と、
>「地球が滅ぶのは困る」とつぶやきながら、
>女の幸せに充足して終わってしまうのをためらう女。



このズレをはっきりさせてしまったのが、
まさしく、有明干拓のデータ改ざんの問題でした。

この事実を知って以来、
仁子ちゃんは、
自分をいちばん理解し、守ってくれる人が、

そのいっぽうで、
そんな彼に守られて生きていくことを、
単純には信じられなくなってしまったのかもしれません。

それは、
極端かもしれないけど、
「彼に守られて生きることが地球を壊すことなのかもしれない」
みたいな、不安とか疑念。

あるいは、それが言いすぎだとすれば、
それは、教授個人に対する疑念というよりも、
「人間の幸福」に充足しきって生きてしまうことへの、
言いようのない不安や疑念だったといってもいいかもしれない。

「人間は何をやっているの・・?」

そこに、
仁子ちゃんの迷いが生まれてしまったんだと思う。

そして、それは結局、
最後まで消せないものだったと思います。

だって、それが、このドラマのテーマだったし。




どう考えても
仁子ちゃんが干拓のデータ問題を知ってしまったことが、
ドラマの上で、決定的なことでした。

そして、そのとき以来、
南原教授自身も、
2人のあいだに拭えない「隔たり」ができていることを、
どこかで悟っているように見えました。

だから、もうその時点で、
ドラマの中で2人が結ばれることはありえなかった。


◇ ◇


当初、南原教授は、
ものごとのすべてを「遺伝子」で考えようとしてました。
それに対して、仁子ちゃんのほうは、
「遺伝子では説明できないものが人間にある」と言ってた。

ところが、途中から立場が逆転してしまいました。

南原教授のほうが、
遺伝子じゃ説明できない「人間の幸福」を求めるようになっていく。
でも、皮肉なことに、
すでにそのときには、
むしろ仁子ちゃんのほうが、先へ行ってしまってました。

というより、
仁子ちゃんのほうが「遺伝子」のほうに戻ってしまったのかも。


このあたりが、
ドラマの構成上のダイナミズムを感じるところでもあるんですが、
あんまり明示的じゃなかった。




いずれにしろ、
人間的な幸福のなかで充足してしまうことが、
いっぽうで生命や自然を傷つけてしまうことかもしれない。
そういう現実を、
他人事じゃないような場所で見てしまったあとで、
仁子ちゃんは、
教授に守られて生きていくことや、
人間としての幸せのなかで生きていくことを、
単純には信じきれなくなってしまったと思います。

どうしようもない不安や疑いをもってしまった。

◇ ◇

ドラマの最後は、
もちろんスッキリしないんだけど、
それは、仁子ちゃん自身が、最後まで揺れていたから。

自分はそれでもやっぱり人間で、
のみならず、ひとりの女の子で、
だから、どうしようもなく人恋しくて、

自分を理解し守ってくれる男の人が、
教授しかいないということも分かっているのに、

それでも、彼を選ぶことができない。

そういう悲しみの中で、
タクシーのラジオを聞きながら、
教授を想って流したのが、最後の涙だったと思います。

もちろん、泣いたのは、その一瞬だけなんだけど、
ちょっと悲しい話だったかもしれません。



◇  ◇  ◇



脚本の構成上のダイナミズムとかもふくめて、
わたしは、ごく個人的には、
このドラマが「傑作」だったと思ってるんだけど、

でも正直、
ちょっと不満なところもありました。

それは、ラストがどうこうってことじゃありません。
(むしろ、ラストはあれでよかったと思う。)

放送終了後、終わり方に賛否両論あって、
一部では物議をかもしたみたいだけど、
むしろ、わたしから見ると、
物議のかもしかたが、まだまだ足りなかったと思う。

せっかく、
人間ドラマとしても、社会派ドラマとしても、
こんなに意欲的で斬新な内容だったんだから、
もっともっと物議をかもしてもよかったんじゃないかと思う。

そのためには、
やっぱり、 最低25%くらい 必要でした。

視聴率、低すぎ。


現実の有明の訴訟と、ドラマの放送が、
同時進行ですすんでたりしてたときは、
わたし自身は、けっこうハラハラして見てましたけど、
一般的にはそういう反応も薄かったと思います。

もちろん、
べつに政治的に物申すとかいうのが、
このドラマの目的ではなかったと思いますけど、
それでも、
せっかく、これだけ社会的に重いテーマも背負ってたんだから、
もっと注目を浴びるような工夫をしてもよかったんじゃないかと思う。

日本中が騒然とするぐらいに。



具体的にいうと、
ドラマの中盤を支えていたエピソードが、
あまりにも たわいなさすぎ でした。

視聴者をひっぱるだけのドラマ力(⇒どらまりょく)に欠けてた。

視聴者をひっぱるには、
途中のエピソードが、あまりにも「小さな物語」すぎでした。


ま、そこが大森ドラマらしいとこでもあるんだけど・・。


「人間ドラマ」の部分にしろ、
「社会派ドラマ」の部分にしろ、
もうちょっと序盤からドラマティックな展開があってもよかった。

せめて初回の20数%の視聴率をひっぱり続けるぐらいの、
序盤からのドラマの展開がほしかったです。



まー、
どっちにしても、
わたしは、大森美香ちゃんのことを、
とても「作家性」のある脚本家だと思ってるし、
期待はぜんぜん失ってないんだけど。





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最終更新日  2005.03.30 23:02:00
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