メートル・ド・テル徒然草

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エルネスト1969

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May 24, 2006
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(昨日からの続き、、、)



 この時、インド洋を舟で渡る際、「緑茶」は海の湿気と赤道近くの熱さで自然に醗酵し、ヨーロッパへ付く頃には「紅茶」ヘと変化していた。と、言う伝説がありますが、これはあくまでも「伝説」で実のところは、もともと意図的に醗酵させていたと言うのが事実です。

 ヨーロッパの人々が「茶」を欲したのは、その「茶」における覚醒効果と殺菌効果でした。
 覚醒効果とは「茶」に含まれる、「カフェイン」がもたらすものであり、殺菌効果とは「カテキン」によるものです。
 この「カフェイン」と「カテキン」を持ち帰ることができるのであれば、あらかじめ醗酵させておいた方が、インド洋を渡っても酸化・腐敗を伴わないと言うのがその理由です。

 乾燥状態で変質をさせないことを望むのならば、水分量を3~4%に保ちつづけばなりません。この水分量を保持しているのが、日本や中国における「緑茶」のスタイルです。
 緑茶は酸化酵素の働きを利用せず、活性を抑えて造った「不醗酵茶」であり、中国緑茶は生茶を釜で煎り、日本緑茶は生茶に水蒸気の熱を当てることによって活性を抑えます。

 また、そもそも東洋とヨーロッパでは、お茶をいれる為の水の違いも影響しました。日本や中国における水は硬度の低い「軟水」であり、ヨーロッパの水はミネラル分の高い「硬水」であったからです。
 硬水においては未醗酵の「緑茶」よりも、完全醗酵の「紅茶」の方が相性が良かった、という理由があったのです。


 当時、ヨーロッパは大航海時代。海外進出の勢力を握っていたのは、「スペイン」と、それに続く「ポルトガル」でした。
 しかし、ヨーロッパ各国の繁栄に変化が見られ、徐々にオランダが勢力を増してきます。
 ポルトガルは勢力を維持・拡大する政治的戦略を持って、王女「キャサリン」をイギリス王子「チャールズ2世」に嫁がせました。この時、1662年。この時代から、英国における「紅茶」の文化が確立されていくのです。

 政治的な結婚戦略に用いられた王女キャサリンは当時の持参金にあたる様々な高価な品々をポルトガルからイギリスに持ち込みました。東洋の 「陶磁器」 、その当時は高価なものであった「砂糖」、そして東洋の神秘「お茶」です。
 イギリス宮廷内で孤独を感じたキャサリンは、気分の安定を図る目的もあったのか、宮廷内でしばしば「お茶」を嗜むようになりました。さらには貴族婦人を招いての「お茶会」を開催。

 もともと、東洋のお茶の文化が入ってきたのですから、そもそも「茶」には砂糖を入れずに嗜んでいたキャサリンですが、他の貴族婦人を招くにあたっては飲みやすいように「砂糖」を加えるようになりました。

 砂糖を加える、と言う事にはもう一面の意味合いもありました。当時、砂糖は大変高価な食材であったからです。現代では何気なく使用される「砂糖」ですが、当時は国際的な貴金属として用いられていた「銀」と同等の値打があるとされ、王女キャサリンは持参金の一部として、一隻の舟に満載した砂糖をイギリスへ持ち込んだのです。

 珍しい「磁器」のティーセットでもてなし、東洋からはるばる来た「茶」をすすめ、惜しみ無く「砂糖」を加えるその行いは、非常に高貴なステイタスシンボルとしてイギリスの貴族階級の眼に映ったのです。

 ここにイギリスにおける「お茶会」の歴史が始まりました。







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Last updated  Jun 24, 2006 01:19:47 AM
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背番号のないエースG @ チョコレート 「風の子サッちゃん」 ~ Tiny Poem ~…
坂東太郎G @ 「辛味調味料」そして考察(01/16) 「石垣の塩」に、上記の内容について記載…
エルネスト1969@ Re[1]:ホスピタリティは「人」ありき(10/04) はな。さんへ コメントありがとうございま…

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