趣味の漢詩と日本文学

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September 11, 2005
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送金昌宗歸錢塘 
新家浙江上、獨泛落潮歸。
秋水照華髮、涼風生褐衣。
柴門嘶馬少、藜杖拜人稀。
惟有陶潛柳、蕭條對掩扉。
【韻字】歸・衣・稀・扉(平声、微韻)。
【訓読文】
金昌宗の銭塘に帰るを送る。
新家浙江の上、独り落潮に泛(うか)びて帰る。

柴門馬嘶(いなな)くこと少く、藜杖人を拝すること稀なり。
惟(ただ)陶潜の柳有り、蕭条として掩扉に対す。
【注】
○金昌宗 劉長卿の友人であろうが、未詳。
○銭塘 浙江省杭州市あたり。
○新家 新居。
○浙江 浙江省を流れ杭州湾に注ぐ川。桐江(上流)、富春江(中流)、銭塘江(下流)と名がかわる。
○泛 浮かぶ。水の上に船を浮かべる。
○落潮 引き潮。
○秋水 秋の清らかな水。
○華髪 しらがあたま。

○柴門 枯れ木の小枝を編んで作った門。また、粗末な家。
○藜杖 アカザの茎で作られた老人用の軽い杖。
○拝 両敬意を示すため、手を胸元で組み、頭を垂れ、つづいて両手を両脇にもどす。
○陶潜 東晋の文人。潯陽の人。字は淵明。彭沢県令となったが、役人生活に嫌気がさして官を辞し、帰郷して田園生活を送った。庭に五本の柳を植え、みずから五柳先生と称した。(?ー427年)。
○蕭条 細々としてものさびしい形容。

【訳】
金昌宗が銭塘に帰るのを見送る。
こんどの君の新居は浙江のほとり、これから独り引き潮に船を浮かべて帰ってゆかれる。
秋の澄んだ水は我が老いぼれた白髪頭を映し出し、秋の涼しい風が毛織りの粗末な着物に吹き込む。
左遷された私の家の門のあたりでは、出番が来たかと馬がいななくことも少く、アカザの杖をつくほどに老いぼれてからは、偉い人に会って頭を下げる機会もめったにない。
ただ陶潜にならって植えた柳がすっかり葉を落とし、細々とものさびしげに閉じた門に対しているばかり。





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Last updated  September 11, 2005 10:52:08 AM
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