趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

November 23, 2005
XML
カテゴリ: 漢詩・漢文
經漂母墓 劉長卿
昔賢懷一飯、茲事已千秋。
古墓樵人識、前朝楚水流。
渚蘋行客薦、山木杜鵑愁。
春草茫茫緑、王孫舊此遊。
【韻字】秋・流・愁・遊(平声、尤韻)。
【訓読文】
漂母が墓を経たり。
昔賢一飯を懐ひ、茲(こ)の事已(すで)に千秋。

渚蘋行客薦、山木杜鵑愁ふ。
春草茫々として緑に、王孫旧(むかし)此(ここ)に遊ぶ。
【注】
○漂母 川で布や綿などを水にさらす洗濯おんな。「母」は、中年の女または老女。のちに漢の高祖の功臣となった韓信が、まだ若くて貧乏だったころに、川で洗濯をしていた女が、彼に飯をくわせてやった。韓信は出世してその恩義に報いたという。『史記』《淮陰侯伝》「韓信国に至り、従食する所の漂母を召して、千金を賜ふ」。
○樵人 きこり。
○前朝 前代の王朝。
○楚水 楚の地方を流れる川。
○行客 旅人。
○薦 祭るために供え物をする。
○杜鵑 ホトトギス。
○茫々 果てしなくひろがるさま。

【訳】
洗濯おんなの墓に通りかかって詠んだ詩。
いにしえの賢人は一飯の恩義をわすれなかったが、このことも、もはや千年も前のできごと。
古い墓は樵のみが知っているようなありさまで、漢の時代と変わらぬのは楚水の流れのみ。
旅人の私が墓前にお供えできるのは渚の浮き草の白い花くらい、貴公子韓信はかつてこの地に遊んだのだなあと思うと感慨深い。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  November 23, 2005 04:52:11 PM
コメント(0) | コメントを書く
[漢詩・漢文] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: