趣味の漢詩と日本文学

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August 6, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
北歸入至徳州界偶逢洛陽鄰家李光宰 劉長卿
生涯心事已蹉■(「足」のみぎに「它」。タ)、舊路依然此重過。
近北始知黄葉落、向南空見白雲多。
炎州日日人將老、寒渚年年水自波。
華髮相逢倶若是、故園秋草復如何。
【韻字】■(タ)・過・多・何(平声、歌韻)。
【訓読文】
北のかたに帰らんとして至徳の界に入り偶(たまたま)洛陽の隣家の李光宰に逢ひき。
生涯心事已に蹉■(タ)たり、旧路依然として此(ここ)に重ねて過ぐ。

炎州日日人将に老いんとし、寒渚年年水自から波あり。
華髮にして相ひ逢ふこと倶に是のごとし、故園秋草復(また)如何(いかん)。
【注】上元二(七六一)年秋、蘇州に帰る途中における作。
○至徳 唐の江南道饒州の県の名。治所は今の安徽省貴池県あたり。
○偶 偶然にも。
○洛陽 唐の副首都。河南省洛陽市。
○李光宰 李旭の子。李光復の弟。洛陽にいたとき隣家に住んでいた。
○生涯 一生の間。
○心事 心に思うことがら。
○蹉■(「足」のみぎに「它」。タ) あてがはずれるようす。
○旧路 むかし通った道。

○重 ふたたび。
○炎州 南方の暑い地方。ここでは尉をつとめていた潘州南巴県を指す。
○寒渚 さむざむしい水辺。
○華髮 白髪。老年をいう。
○若是 かくのごとし。

○如何 どうであろうか。
【訳】
北方に帰ろうとして至徳に入り、偶然、洛陽で隣家に住んでいた李光宰に逢って詠んだ詩。
一生のあいだ胸中に思うこと皆あてはずれ、再び此の地通り過ぎ、昔のままは道のみか。
北に近づき色づいた葉の散る見るは久しぶり、南に向かったあの時は空しく白雲見たことよ。
炎熱の地に日日過ごし我も老年さし迫り、寒ざむとした水ぎわに川の波立つ見るばかり。
互いに白髪頭にてこんな具合に出会うとは、わが旧宅の秋の草どれほど延びて荒れていよう。






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Last updated  August 7, 2007 08:19:41 AM
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