趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

August 11, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
上巳日越中與鮑侍御泛舟耶溪 劉長卿
蘭橈縵(一作萬)轉傍汀沙、應接(一作隔)雲峰到若耶。
舊浦滿(一作遠)來移渡口、垂楊深處有人家。
永和春色千年在、曲水郷心萬里■(「貝」のみぎに「余」。シャ)。
君見漁船時借問、前洲(一作桃源)幾路入煙花(一作霞)。
【韻字】沙・耶・家・■(シャ)・花(平声、麻韻)。
【訓読文】大暦五(七七〇)年三月、越中における作。
上巳の日越中にて鮑侍御と舟に耶渓に泛かぶ。
蘭橈縵やかに(一に「万」に作る)転じて汀沙に傍ひ、応に雲峰に接して(一に「隔」に作る)若耶に到るべし。

永和春色千年在り、曲水郷心万里■(はるか)なり。
君漁船を見て時に借問す、前洲(一に「桃源」に作る)幾(いづ)れの路か煙花(一に「霞」に作る)に入らん。
【注】
○上巳日 旧暦三月の初めの巳の日。みそぎをして不祥をはらう習慣があった。
○越中 春秋時代に越の国があった地域。今の浙江省に属す。
○鮑侍御 鮑防。天宝の末、進士に挙せられ、浙東観察使の薛兼訓の従事と為り、累ねて殿中侍御史に至る。入りて職方員外郎と為り、太原少尹正に改めらる。
○泛 浮かぶ。
○耶渓 若耶渓。別名、五雲渓。浙江省紹興県の東南の若邪(一作耶)山のふもとの渓谷。
○蘭橈 モクレンで造った舟のかい。
○縵 ゆるやか。
○汀沙 みぎわの砂原。砂浜。

○若耶 若耶渓。
○渡口 渡し場。
○垂楊 シダレヤナギ。
○永和 ここでは東晋の年号。三四五……三五七年。
○春色 春の景色。

○郷心 故郷を思うこころ。
○万里 非常に遠い距離。
○■(「貝」のみぎに「余」。シャ) はるか。
○漁船 いさりぶね。
○借問 たずねてみる。
○幾路 どの道。
○煙花 春霞たつ美しい景色。
【訳】
上巳の日に越中で鮑侍郎と共に舟で耶渓に遊んだ時の詩。
木蘭のカイゆるやかに漕いでめぐるは浜のきわ、雲にそびえる峰のもとぐるり到るは若耶渓。
ふるびた浦に潮満ちて舟を渡しに漕ぎ着けりゃ、しだれ柳のその奥にひっそり暮らす人家在り。
永和の昔の春げしき千年かわらず今も在り、曲水まえにたたずめば故郷万里のかなたなり。
いさり漁船をば見つけたる君は漁師に問いかける、この先の洲のどの道がもっとも景色よかろうか。





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Last updated  August 12, 2007 12:59:50 PM
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