趣味の漢詩と日本文学

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August 17, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
送惠法師遊天台因懷智大師故居 劉長卿
翠屏瀑水(一作布)知何在、鳥道猿啼過幾重。
落日獨搖金策去、深山誰向石橋逢。
定攀巖下(一作上)叢生桂、欲買雲中若箇峰。
憶想東林禪誦處、寂寥惟聽舊時鐘。
【韻字】重・逢・峰・鐘(平声、冬韻)。
【訓読文】
恵法師の天台に遊ぶを送り因つて智大師の故居を懐ふ。
翠屏瀑水(一に「布」に作る)何くに在るを知らんや、鳥道猿啼幾重をか過ぐる。

定めて攀ぢん巖下(一に「上」に作る)叢生の桂、買はんと欲す雲中若箇の峰。
憶ひ想ふ東林禅誦の処、寂寥として惟だ聴く旧時の鐘。
【注】
○恵法師 未詳。
○天台 浙江省天台県の北にある山。 
○智大師 智■(「豈」のみぎに「頁」。ギ)。陳・隋の高僧。天台宗の創始者。(五三八……五九七年)。
○翠屏 きりたった屏風のような青い山。
○瀑水 滝。
○鳥道 鳥だけが通うことができるような険しい道。山の尾根をさすという。
○落日 夕陽。
○金策 錫杖。僧侶が用いるつえ。

○石橋 顧▼(リッシンベンに「豈」。ガイ)之『啓蒙記』「天台山の石橋は、路径尺に盈たず、長さ数十歩、歩至って滑らかにして、下は絶冥の澗に臨む」。
○攀 枝につかまる。
○若箇 いくつ。
○東林 江西省廬山東林寺。晋の恵遠が開いた寺。ここでは天台山の寺をたとえる。
○禅誦 経を読む。

【訳】
恵法師が天台山に遊ぶのを見送り、そこで智大師の旧居を心に思って詠んだ詩。
屏風のような青き山、みなぎり落ちる滝の水、それらはどこにあるのやら、鳥のみこえる尾根を行き猿啼く深き山の峰いくつ過ぎればたどりつく。
夕陽かたむくその中で錫杖ついて山登り、深山石橋あるあたり行き交う人の影もなし。
きっと巌に聳え立ついくつも桂の枝つかみ、雲にそびえるいくつもの峰を買おうと思うだろう。
昔おもえば東林に仏の教え説くところ、ひっそりとした山奥にかつてと変わらぬ鐘の声。





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Last updated  August 17, 2007 08:09:31 AM
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