趣味の漢詩と日本文学

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August 18, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
送侯中丞流康州 劉長卿
長江極目帶楓林、匹馬孤雲不可尋。
遷播共知臣道枉、猜讒卻為主恩深。
轅門畫角三軍思、驛路青山萬里心。
北闕九重誰許屈、獨看湘水涙霑襟。
【韻字】林・尋・深・心・襟(平声、侵韻)。
【訓読文】
侯中丞の康州に流さるるを送る。
長江極目楓林を帯び、匹馬(ヒツバ)孤雲尋ぬべからず。

轅門(エンモン)画角三軍の思ひ、駅路青山万里の心。
北闕(ホクケツ)九重誰か屈するを許さん、独り湘水を看て涙襟を霑(うるほ)す。
【注】上元二(七六一)年秋、蘇州に帰る途中の作。
○侯中丞 侯令儀。浙西節度使をつとめていたが、上元二年に罪により康州に流された。「中丞」は、御史中丞(御史台の次官)。
○康州 唐の嶺南道の州の名。広東省徳慶県。
○長江 中国最長の川。下流を揚子江という。
○極目 見渡す限り。屈原《招魂》「湛々たる江水上に楓有り、目千里を極め春心を傷ましむ」。
○楓林 シナカエデの林。
○匹馬 一匹の馬。
○孤雲 はぐれ雲。
○遷播 遠方に流浪する。

○枉 曲がる。
○猜讒 そねんで事実に反する悪口を言い他人をおとしいれる。
○主恩 主君の恩。
○轅門 軍門。陣営の門。
○画角 軍中でもちいる、龍などの絵のある角笛。形は竹筒のごとく、本は細く末は大。

○駅路 宿場を通る道。街道。
○青山 樹木の青く茂った山。
○万里 遠く離れているようす。
○北闕 宮城の北の門。
○九重 宮中。
○屈 功や才能が認められない。
○湘水 湖南省を流れ、瀟水と合流して洞庭湖に注ぐ。
【訳】
侯中丞が康州に左遷されるのを見送る詩。
長江遠く見渡せば向こうに楓の林あり、きみ乗る馬とはぐれ雲後追うことも出来かねる。
無実の罪で左遷され臣下の道も直ならず、天子のご恩深きゆえかえってこんなにそねまれる。
軍中画角の音ひびき兵士の思いもさまざまじゃ、街道ぞいの青き山帰郷の念をおこさしむ。
宮中にいる方がたもいつまで君の功績を評価せずにはいられようか、われただ一人湘水の流れ見ながら君のこと不運に思い嘆きつつ流す涙に襟ぬらす。





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Last updated  August 19, 2007 09:04:58 AM
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