趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

August 20, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
避地江東留別淮南使院諸公 劉長卿
長安路絶鳥飛通、萬里孤雲西復東。
舊業已應成茂草、餘生只是任飄蓬。
何辭向(一作故)物開秦鏡、卻使他人得楚弓。
此去行持一竿竹、等閑將狎釣漁翁。
【韻字】通・東・蓬・弓・翁(平声、東韻)。
【訓読文】
地を江東に避けんとして淮南使院の諸公に留別す。
長安路絶えて鳥のみ飛通し、万里孤雲西して復(また)東す。

何ぞ辞せん物に向つて(一に「故」に作る)秦鏡を開き、卻つて他人をして楚弓を得さしむるを。
此を去るに行きて持せん一竿の竹、等閑将に狎れんとす釣漁翁。
【注】
○避地 戦乱などを避けて安全な土地に転居する。
○江東 揚子江下流地域。
○留別 旅立つ者が残る者に詩を留めて別れの気持ちを述べる。
○淮南 淮水以南の地。ほぼ江蘇・安徽省の長江以北と淮河以南の地。
○使院 節度使留後の役所。
○諸公 方がた。
○長安 唐の都。いまの西安市の西北。
○万里 非常に遠い距離。

○旧業 昔すんでいた別荘。ふつうは、「古くから積み立てた財産」とか、「昔からの事業」とかいう意味だが、あとに続く「成茂草」と合わないので、ひとまず「業」を「別業」の意に解しておく。
○余生 残りの人生。
○飄蓬 風に吹き飛ばされて転がるシナヨモギ。おちぶれて各地をさすらうたとえ。
○秦鏡 秦の宮殿にあった鏡。人の病気の場所や、邪心を映し出したという。
○他人得楚弓 春秋時代の楚の共王が猟に出た時、宝弓をなくした。周りの家来が探そうとしたが、王は「楚の人間がなくし、楚の人間が見つけるだろうから、どうして探す必要があろう」と言ってとめたという。のちに、損失が外部に利益をもたらさないたとえ。

○等閑 成り行きにまかせる。
○狎 なれる。
【訳】
戦乱を避けて江東に移住しようとして淮南の役所の諸君に別れの気持ちを詠んで贈る詩。
長安までの路絶えて、ただ鳥のみが飛び通う、万里のかなたはぐれ雲西かとおもえばまた東。
旧宅すでに草茂り、余生はまるで風に転々とあちこちころがる蓬かな。
秦の鏡の箱を開け諸君に見せん我が心、主君を思う忠示し諸君の心を鼓舞せんか。
この地を去るにあたっては釣り竿忘れず持ちゆかん、あとは成り行きまかせにて魚釣る翁に親しまん。





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Last updated  August 22, 2007 01:05:51 PM
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