趣味の漢詩と日本文学

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September 3, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
送馬秀才落第歸江南 劉長卿
南客懷歸郷夢頻、東門悵別柳條新。
慇勤斗酒城陰暮、蕩漾孤舟楚水春。
湘竹舊斑思帝子、江離初緑怨騷人。
憐君此去未得意、陌上愁看涙滿巾。
【韻字】頻・新・春・人・巾(平声、真韻)。
【訓読文】
送馬秀才の落第して江南に帰るを送る。
南客帰るを懐ひて郷夢頻りに、東門別るるを悵(いた)みて柳条新なり。

湘竹旧斑帝子を思ひ、江離初めて緑にして騷人を怨む。
憐ぶ君の此より去りて未だ意を得ざるを、陌上愁ひて看る涙巾に満つるを。
【注】天宝年間、長安における作。
○馬秀才 「秀才」は、科挙の受験有資格者。
○落第 試験に合格しない。
○江南 長江下流の南方。
○南客 南方から旅人。
○悵 残念がる。
○柳条 柳の枝。
○慇勤 心をこめるようす。
○斗酒 いくらかの酒。

○蕩漾 漂う様子。
○孤舟 ただ一隻の小舟。
○湘竹 庭竹の一種。舜の死を悲しんだ湘妃(娥皇・女英)の涙が竹にそそぎ、斑点ができたという。
○帝子 伝説上の皇帝、舜に嫁いだ尭の二人のむすめ娥皇・女英。
○江離 香草の名。『楚辞』《離騒》に見える。

○得意 思い通りになる。
○陌上 大通りのそば。愁ひて看る涙巾に満つるを
【訳】
馬秀才が落第して江南に帰るのを見送る。
南方から来た君はいま故郷に思いを馳せるらん、町の東門この別れ嘆く柳の枝の陰。
町の北にて送別の酒ねんごろに杯につぎ、波にゆられる小舟にぞ身を載せ楚水の春に浮く。
竹の斑点みるにつけ娥皇・女英を思い出し、緑の江離みるたびに屈原の無念身にしみる。
ああ君こころ残りにて此の地を去るはつらかろう、道のほとりに涙をばぬぐうハンカチあわれなり。





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Last updated  September 4, 2007 08:51:29 AM
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