趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

January 6, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】季縄の少将のむすめ右近、故后の宮にさぶらひけるころ、故権中納言の君おはしける、たのめたまふことなどありけるを、宮にまゐること絶えて、里にありけるに、さらにとひたまはざりけり。

【注】
・季縄の少将=藤原季縄(すえただ。一説に、すえなわ)。平安中期の官吏。左中弁藤原千乗の子。官は従五位下、右近少将に至った。鷹狩りの名手として知られ、交野の少将と呼ばれた。(生年不祥……919年)
・右近=藤原季縄のむすめ(一説に妹)で、『百人一首』の「忘らるる身をは思はず……」の歌で知られる。
・故后の宮=醍醐天皇の中宮、藤原穏子。
・故権中納言の君=藤原敦忠。左大臣藤原時平の子。三十六歌仙の一人。『百人一首』の「あひ見てののちの心に……」の歌で知られる。(906……943年)

【訳】季縄の少将のむすめ右近が、故后の宮(穏子)にお仕え申し上げていたころ、故権中納言の君(藤原敦忠)がいらっしゃって、頼みに思わせるようなことをおっしゃったことがあったが、右近が宮に参上することが途絶え、実家にいたところ、いっこうに中納言が訪問なさらなかったとさ。

【本文】内わたりの人きたりけるに、「いかにぞ、まいり給や」と問ひければ、「つねにさぶらひ給」といひければ、御文たてまつりける。

わすれじとたのめし人はありときく言ひし言の葉いづちいにけむ





【訳】宮中の人がやって来たときに、「どうですか、中納言さまは最近、宮中へ参上なさっていますか」と質問したところ、「いつもいらっしゃっておいでです」と言ったので、御手紙を差し上げたとさ。その手紙には

あなたのことは決して忘れるまいと、甘い言葉で私にあてにさせた人は、いつもそちらにいると聞きましたが、あのとき言った言葉は、どこへいってしまったんでしょうねえ。

という歌が書いてあったとさ。






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Last updated  January 6, 2011 02:12:01 PM
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