趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

January 12, 2011
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カテゴリ: 国漢文
【本文】む月のついたちごろ、大納言殿に兼盛参りたりけるに、物などのたまはせて、すずろに「うたよめ」とのたまひければ、ふとよみたりける、

今日よりは荻の焼け原かきわけて若菜つみにと誰をさそはむ

とよみたりければ、になくめでたまひて、御返し、

片岡にわらび萌えずはたづねつつ心やりにやわかな摘ままし

となむよみたりける。
【注】
・大納言殿=ここでは、藤原顕忠の屋敷。藤原顕忠は、藤原時平の子で、(948……959年まで)大納言をつとめた。
・兼盛=平兼盛。官は従五位上、駿河の守に至った。三十六歌仙の一人。
・焼け原=焼け野。野焼きを終えた野原。

・片岡=歌枕としては、「奈良県北葛城郡王子町。王子町から香芝町にかけての丘陵地帯」が有名だが、ここでは、都から近い「京都市北区、上賀茂神社の東にある山。片岡の杜」を指すか。(岩波日本古典文学大系)は、一般名詞ととり、「一方が急傾斜になっている丘」としている。

【訳】陰暦一月の一日ごろ、大納言藤原顕忠さまのお宅に、兼盛がうかがったところ、世間話などをなさって、それから特にこれといった理由もなく「和歌を作れ」とおっしゃったので、その場でさっと作った歌、

今日からはオギの焼き原をかき分けて、若菜を摘みにと誰を誘おうかしら。(顕忠さま、わたくしと一緒に行かれませんか?)

と作ったところ、これ以上ないほど、おほめになって、作られた返歌

片岡に、もしも、わらびが芽をだしていなければ、あちこち探しながら気晴らしに若菜でも摘もうかしら。

とお作りになったとさ。






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Last updated  January 12, 2011 11:07:42 AM
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