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2010年07月15日
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カテゴリ: カテゴリ未分類



そんなカンナを見るたびに思い出す人がいる。


まだ名古屋に住んでいたころ、私の家の2軒となりにその人たちは住んでいた。

何時も着物を着ていた細い人と、色白でちょっと太目の温厚な紳士だった。

自営の仕事と2人の子供を抱えてきりきり舞いをしていた私は

ベランダに置いた植木鉢に水をやるのをよく忘れ しょっちゅう葉を枯らしていた。

それを見かねていたのだろう、可哀相にとわざわざ自宅からみずをくみ

面倒を見るような物静かなやさしい男だった。

たまに一言二言話したときに、ここにいるときが一番幸せなんだと紳士は言った。



どこにいくのと、隣の地元の人に聞くと

(本宅は東京にあって、彼女は2号さんで、土日は本宅に帰ると決まっているの。

 彼女は行きつけの飲み屋のママだったらしいよ。もう長いから夫婦みたいなもんよ)

二人の家の前には家人には不似合いな真っ赤なカンナの花が毎年見事に咲いた。

燃え立つようなカンナの色は、彼らの愛の雄たけびだったのか。


ある年、ぱったりと彼の姿を見かけなくなった。

ごみだしの時にすれ違ったので、どうしたのですかと着物の人にたずねたら

入院をしていてもう長くは無いのですといった。

確かに彼女もやつれているようだ。

お気の毒に、御見舞いに行かれたのですか。(あれ、聞いて良かったのかな?)

行ったのですが生憎奥様がいらして、泥棒猫と言われてジュースを投げつけられました。



こんなに美味しいものはないと泣いて食べてくれました。30年以上も一緒にいて

事業の為に随分とお金の工面もしたんです。なにもしてやれなくてすまないって言ってくれて。

お嫁さんとお姑さんの仲が悪くて、それが嫌で私のところへ来るようになったのですよ。

でも多分、もう帰ってはこれないでしょう。  と、

ろくに人生も知らない27,8の私の前で年配の着物の人は涙を流して泣いた。





時は移ろい、着物の人は飼っていた黒猫となくなく別れ、

息子のマンションへ引き取られていった。

主をなくしたカンナの花はみるみる弱ってしなっていった。

空き家になった家に次に越してきたのは、元気な男の子と女の子のいる家族だった。

年毎にカンナの茎は小さくなり消えてしまった。


穏やかで慎ましやかに見えた二人は、修羅の人達だったんだ。

カンナの真っ赤な色ははそれを象徴していたのか。


この哀しさは、一体なんなんだろう。

何がいけなかったのだろうと考える。

嫁と姑が仲がよかったらどうなんだろう。彼が嫁を一番大事にしていたらどうなんだろう。

嫁はなぜ、彼より姑と一緒にいるほうを選んだんだろう。

今でもまだ2人の女はいがみ合いながら暮らしているのだろうか。

男はただ居心地の良いところを探したかっただけなのだろうに。

激しい色のカンナの花を見るたび私は思う。

女の、我の業が、いかに凄まじくたくさんの者を巻き込んで悲劇を起こしてゆくか。

その哀しみを燃え立たせるようにカンナが、咲く。真っ赤なカンナが、咲く。


                   2010/7/15 kanaria


























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最終更新日  2010年07月16日 01時28分21秒
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