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2012年01月20日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
ある昔の話です。

土を耕し暮らしをする伊門の村は貧しく厳しいところでした。
村にはある伝説があり、鬼の商家と言うところがあり、そこへ行けば米がただで手に入るという噂でした。
確かに、取ってきたという人も何人もおり確かなことのようでした。
ただし、取りに行けるのは男衆であり、女人が入ると、必ず家に不幸が起こり、盗って来れる量は、手にした器1杯分だけ、欲をはり、袋や2つも3つも持ち込んだものは、うまくいかないという言い伝えがありました。

伊門も、行って見ようと思い、女房の心配をときふし、3歳の長男の壮太に小さな器をもたせて女房の手を振り払い、鬼の商家のあるというところへ出かけてゆきました。

壮太の手を握りながら、歩いて歩いて、段段と日が落ちて参りました。
日が落ちる前に着かないと、鬼が帰ってきてしまい、何人もの男が、鬼に殺されてしまったのか帰ってきませんでした。
鬼のいない、日暮れまでに、米を盗ってこなければなりません。伊門は足を速めました。



伊門も壮太の手を引きずるようにしてその行列に並びました。
反対側には、器に米を盛り、そそくさと帰り行く人々が見えました。
伊門は、自分の器を握り締めました。(壮太、器をちゃんと持ってろよ。)
壮太がきっと眼を引き締め、うなずきます。

列は段段進み、やがて薄暗い家の中に入りました。
棚や、板が無造作におかれ、薄暗い中に、様々な家具や袋や道具がおいてありました。
菓子や酒も置いてあり、それをちゃっかりふとこりに入れている人もいます。盗っちゃって大丈夫なのか知らん。
人々は、足早に家の奥の階段を下り始め、どんどんどんどん下のほうへ降りてゆきました。
伊門も後につずきます。(どうなっているのだろう、自分の分は有るのかしら)と心配しました。

5,6段は下りたでしょうか、ざらざらと音が聞こえ、おお、米が、山と積まれているのが見えました。
人々は、己の抱えた器に出来るだけ乗せ、そそくさと戻ってゆきます。

家で、みなで、賑やかに食べる姿を想像しました。人参があるぞ、芋もあるし、味噌も少しつくってあったし、ああ、早く女房を喜ばせてやりたい。

はやる気持と一緒に、米を反対の手でふさぎながら、急ぎ足で戻りの階段を駆け上がった。
早く、家を出なければ、鬼が帰ってきてしまう、もう日暮れ時だからな、急がなければ。
鬼が来たら大変だ。

とくとくと足を速め、2つ3つと米をこぼしながら、出口の明かりが見えるところまでやってきた、時にあっと、伊門は声を上げました。

久しぶりに見た、艶やかな米に舞い上がり、壮太のことをすっかり忘れていた。伊門は慌てました。(壮太?)小さな声で呼んでみる。無論答えはない。

正気に戻りまわりを見渡すと、戻ってくる人ばかりで、降りてゆく人はいない。
壮太を探さなければ、血の気がおりて、伊門は、上がって来る人々の肩をぶっつけながら、いそいで階段を駆け下りました。

気がつくと人気のなくなった階段に、小さな器がいくつか転がっている。
自分と同じように、小さな子を連れた親がいたのだろう、この器の子はどうなったのか?
伊門は恐ろしさに身が震えました。

息を切らせ、誰もいなくなった米のある部屋に下りた伊門は、階段の隅に落ちている小さな器を見つけました。
壮太に持たせた器だ、茶の渦巻きの文様がある。きっとこの階にいるはずだ。
(壮太、?)小さな声で呼んでみた。反応がない。
もう一度、少し大きな声で(壮太、父ちゃんだ、どこだ?)と呼んだ。

奥の車輪の影で小さな影がゆれて、(父ちゃん、)と聞こえたような気がした。

覗き込もうとした伊門に、(わおおっ)と言う大声が聞こえて、ふりむいた伊門はのけぞってしまいました。

ぼろぼろのよろいを身に着けた大きな鬼が仁王立ちに立っていたからです。
(何をしている!盗人か!)
鬼が剣をざらりと抜いたので、伊門も思わず持っていた小刀を抜き身構えた。手に持っていた器が吹っ飛び、米が飛び散った。
鬼は、ちらりと米を一瞥し、小刀を振り回す伊門を軽くあしらい、一歩二歩と詰め寄ってきた。
土を扱う伊門が戦うすべもない、わっと鬼の振り上げた剣の前で、身体が吹っ飛び仰向けに倒れてしまう。赤い鬼の顔の大きく開けた口にぎらぎらと牙が光っているのが見える。鬼が、大きく刀を上段に構えた。ああ、もうだめだ。

瞬間、ふわっと何かが顔を覆って真っ暗になった。(死んだのか?)

(父ちゃん)黄色い甲高い声が聞こえた。壮太が、自分の顔の上にかぶさったと知った。
壮太の甘いにおいがする、温かい体温が頬に伝わってくる、コトコトと早鐘のような心臓の鼓動も聞こえるではないか!
(壮太が、ああ、壮太と一緒なら。)伊門は一瞬想った。
壮太と一緒なら、死んでもいいか。ああ、壮太、可愛い壮太。

しゅうと、風邪が伊門の顔に当たり、振るおろされた鬼の剣が、壮太の小さな首の後ろでとまっていた。壮太の首に小さな線が引かれ、一しずく赤い血がにじんだ。

剣を引いた鬼が、一歩後ずさり、野太い声で(去れ!)と言った。

腰が抜けたような伊門だったが、やっと起き上がり、壮太の身体を抱えあげた。
観ると壮太は、自分があてがった茶の器を、小さな手で握り締めている。
鬼がじろりとそれを見ると、伊門が散らした米を、一すくいし、壮太の器にざらりといれた。
(去れ!)鬼が、剣をまわした。気丈にも、壮太は鬼を睨みつけている。

伊門は、がやがやと声が聞こえたような気がしたので、壮太を抱え直し急いで階段を駆け上がった。

外は、もう真っ暗だった。
(壮太、大丈夫か?)にこりと笑った壮太は、小さな器をふさいでいた手を離し、(おとう、お米だよ)と言った。月の光に輝く、もみのついた米は、ふっくらと大きく、つやつやと輝いた。
壮太の首にこびりついた血に気がついて、伊門は自分の巻いていた手拭いをまいてやり、
(壮太、ありがとな)とつぶやき、自分の懐に壮太を巻き込み(さあ、家にかえろう)と歩き始めた。

無論、女房が喜んだのは言うまでもない。伊門と壮太が帰ってきた事がだよ。

それから、どうなったかって?

伊門はその米は食べなかったのさ。
その年は、もみのついた米を田圃に植えて、そりゃ、その年はひもじかったけどね、
翌年には、何倍もの米が収穫できたのさ。

そして、何代も、何代もつながってきてね、今ここに、君がいるのもそのお陰なのだよ。
伊門の思い、壮太の勇気、女房の想い、みんなつながって、今の君がいるんだよ。




                       2012/1/20 kanaria



















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最終更新日  2012年01月20日 08時37分57秒
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