嫌です 南風一
昔 好きな人がいた
一度は待ち合わせできたけれど
その後出てきてくれなくなった
そのくせ学校からの帰り道では
なぜかお互いの姿を目にするのだった
駅の改札口で誰を待つのか
必ず彼女の姿があった
彼女といつも一緒に帰っている友人がいた
その友人は電車が私と同じだったので
名前は知っていた
ある日友人の方に電話した
そして彼女との間を取り持ってくれるよう依頼した
友人は心良く引き受けてくれた
代わりにというのではなかっただろうが
友人にも好きな男の子がいるということだった
名前を尋ねると私と同じクラスの男子生徒だった
私も少しは助力しましょうかと申し出たが
お構いなくという答えだった
電話の翌日 彼女と友人は一緒に出かけるので
そのとき彼女に会ってみてはと提案されたので
私は友人の申し出に甘えることにした
翌日 私は友人から教わった時間より少し前に
駅に着いた
彼女と友人が改札口から出てくるのを待って
彼女に近づいた
彼女は私を見てびっくりしたようだった
私が人目も憚らず「付き合ってください」と言うと
「嫌です」とだけ言って
友人の手を掴んでぐんぐん歩き出した
友人は彼女の方を向いて取りなそうとするが
彼女はとりつく島がなかった
友人は申し訳なさそうに
私の方を見た
すぐ近くで「ばっかじゃないか」という声がした
それから3年後
遠くの大学で彼女に出くわした
彼女は何食わぬ顔して私に「ケーキはいかがですか?」と
近づいてきた
この女は一体何を考えているのだろうと思った
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