misty247

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2010.08.02
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カテゴリ: 私の歩いた山と道
 安川茂雄著『北岳の夕映え』は、日本における登山黎明期の遭難史を綴った本である。『岩と雪の悲劇』という副題を持ち、このシリーズは全4巻からなる。『北岳の夕映え』はその第4巻で1967年第一版。
 この書のなかに北岳での遭難が4件書かれてあった。その一つを要約して紹介する。





 6日、小太郎尾根まで登った一行は、北岳が雪煙とガスに包まれてみえないため、その日の登頂を諦め下山を開始した。尾根から50mほど下ったとき、雪崩が起こった。最初はゆっくりと、しだいに急斜面で速度を増して落ちていった。
 先頭の2名が巻き込また。一人は端にいたため、途中で樺の枝につかまって停まった。しかし、もう一人、野村は完全にのまれたようである。
 パーティは雪崩の跡を辿りながら、野村の姿をさがした。下の池までくると巨大なデブリが堆積して、一体どこに野村が埋まっているのか見当もつかなかった。
 捜索していると、まず枝に衣服が掛っているのが見つかり、そこからの血痕をたどると、野村が見つかった。左足骨折で疲労と寒さで口もきけない状態だったが、死んではいなかった。4時間後、広河原の小屋に運び込んだときは、野村は少し元気を取り戻していた。七日は救援の伝令を出し、吹雪になった八日をやりすごし、九日に野村を運び出す準備を整え、十日の朝から作業にかかった。
 白井沢より下の猟人小屋で迎えの医師の診察と治療を受けることができた。翌十一日、野村の容態が悪化した。貧血を繰り返し気を失う野村にカンフル注射をするも、呼吸は次第に弱くなり、ついに夕方、23歳の野村は息を引き取った。





 草すべりで起こった雪崩だと思われる。あの斜面に木が育っていないのは、毎年の雪崩のコースなのか。
 しかし、広河原まで降りてからの救出に、5日以上の日数がかかっている。今では、広河原まで下りたら助かったも同然なのに、昭和初期のこの時代だと、そこからが問題だったようだ。
 林道バスの運賃の一部は、万一のときの保険代なのだと考えれば、ますます納得の価格である。

 14:40、 白根御池小屋 を通り過ぎた。玄関前にソフトクリーム形の看板が置いてあった。北岳の中腹でソフトクリームが買える時代である。


 白根御池から広河原への下りも結構歩きごたえがあった。前半は平坦だったが、後半は急斜面だった。
 白根御池小屋で泊まるプランだと思うが、結構な数の人たちが登ってきた。狭いところで待つとき、すれ違いざまに観察すれば、いずれも年配の方たちで、だいたい50歳以上。朝のバスにしてもそうだった。

 社会の高齢化にあわせて、山を歩く人も高齢化しているのだと思う。もちろん山は、老若問わず一定レベルの体力を要求する。自慢するわけではないが、私ほど足腰を鍛えることに躍起になっている者でさえ、北岳に登って相当に疲れた。下山後の数日間は軽い筋肉痛に見舞われた。距離は長いとはいえ、まだ幾分若く、軽い荷物でだ。
 それだけに、素直にしんどそうに山を登ってくる年配の人たちをみると、そのパワーにいつも感心させられる。

 16:10、広河原に着いた。
 ちょうどバスが出てしまったところで、50分待ち。バス代は十分に納得したが、こういう時間の制約を受ける点で、やっぱりバスは性にあわないなぁ。
 バスより100円高いだけの乗合タクシーも同じ時刻にしか出ないので利用価値がない。バスの乗客を奪わない範囲でしか営業できないとか、そんな条件があるのだろう。
 広河原17時発の最終便にのって芦安駐車場に18時過ぎに戻ってきた。
 南アルプス市へ帰る途中の 天恵泉白根桃源天笑閣 に寄って汗を流した。(10:00~受付19:30~20:00・500円・月休)
 タイミングがよかったのか、この風呂の入口で桃を御馳走になった。美味しくて、嬉しくて、帰りにお土産コーナーにあった桃とジャガイモを買っていこうと考えていたのに、湯あがり後、土産物コーナーは店じまいしていて買えなかった。
 展望が得られなかったことと、もうひとつ心残りを、この温泉にこさえてしまった。
 まぁ、どちらも、いつかまた。  <終>



私の歩いた山と道<目次>









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Last updated  2010.08.05 17:07:58
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