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これ『日本侠客伝 マキノ雅弘の世界(山田宏一)』は、以前山田宏一と山根貞男が編著した『映画渡世・天の巻』『映画渡世・地の巻』

(昭和52年・平凡社)の、続編的あるいは、ダイジェスト版的本である。
だから、やや粗っぽいところも見受けられる。
しかし、山田宏一のマキノ雅弘に対する思い入れが一杯詰まっていることは十分に分かる。思い入れが強すぎるせいかもしれないが、読み進めて行くうちに、少々辟易とする。
だが、以下、マキノ雅弘の凄いところ・・・、
芝居のつけかたが印象的だった。男は腰に重心をかけて動け、女は左足に重心をおいて立って、右足を浮かせ、ちょっとうつむいて、右足で「の」の字を書いてみろ、というのである。それだけで男らしい「線」、女らしい「線」が出て芝居がきまるという・・・。 p67
『日本侠客伝 花と龍(1969)』でのこと、星由里子は東宝から借りてきた女優さんでしたが、きゃしゃな体つきなのに芯が強くて、芝居もうまかった。泣くまいとこらえて笑顔をつくっても涙がこぼれてしまう、あの美しい顔は大女優だと思いましたよ。忘れられない女優さんですね。しかし、東宝は女優の育てかたが下手いうたら何やけど、あまり大事にしないらしく、星由里子のことでも、[当時]東宝専務の藤本眞澄氏から電話があって「東映からのたってのたのみでお貸ししたんですが、あんな鈍な女優に『花と龍』の玉井金五郎の女房マンの役がつとまりますか。きっとあなたが困っているのではないかと思って・・・」いうし、すぐまた同じ東宝の雨宮[恒之]撮影所長からも電話があり、「星由里子は当時の監督泣かせのナンバーワンでして、ちょっと心配になったもんですから・・・」とのこと。私は撮影の初日からすばらしくいい女優だと確信していたので、「クセのない、いい女優さんですよ」とお答えしたんですけどね。 p110
この時の星由里子も、『日本侠客伝 血斗神田祭り(1966)』の野際陽子も、気持ちが高ぶり、本当に泣いてしまったという、エピソードもある。
余談だが、『日本侠客伝 血斗神田祭り(1966)』の鶴田浩二と野際陽子は素晴らしい。
今ではなくなったシステム、プログラムピクチャーは様々なものを残した。
マキノ雅弘の作品もその中に数えられる、当時いわゆるベスト10に入るものはなかったかもしれないが、今でも輝く作品は多い。
マキノ監督の早撮りはかならずしも手抜きややっつけなどではなかったのだ。マキノ監督も、「やくざ映画一つとっても、絶対にわたしは[作品を]投げたことがない。自分の名前も出れば、客にお金をとって見せるんですからね」と語っている。
(名古屋シネマテーク編「シネアストは語る――4 マキノ雅弘」 聞き手/森卓也 風琳堂)孫引きですが、ここにもマキノ監督の姿勢がある。
CSなどでの放映があれば見たいと思う。

日本侠客伝 マキノ雅弘の世界
山田宏一
ワイズ出版
2007年12月29日 第1冊
『手仕事の日本』 2015.10.16
『ひらがなだいぼうけん』 2015.09.26
新折々のうた2 2015.09.25