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千菊丸2151 @ お久しぶりです。 仙人草さま、お久しぶりです。 イケ君…
mifess @ お元気ですか 2012/03/01 仙人草21さん >その後、記事の掲載が進…
仙人草21 @ こんばんは。    mifessさんへ お元気でお過ごし…
mifess @ お元気でいらっしゃいますか? 生活環境が種々変化してくると、言葉に出…
仙人草21 @ kyonkyonさん、こんにちは! いつも温かいコメント、ありがとうござい…

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俳ジャッ句      耀梨(ようり)さん
Mar 3, 2010
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 何故、イケが一人で戦ったことが、奴らから、もう狙われないと保証されるのだろう。

奴らは、そんなに簡単にイケを解放してくれるのだろうか。

ぼくは、今までよりもっと、イケが心配になった。

奴らの暴力が、あまりにも酷かったからだ。その暴力を、目の当たりにしたからだ。

 今日は、運良くマサルが現われてくれたけど、今日みたいにこれからも、うまくいくとは、

限らない。

イケは、こんなに弱ってしまっている。家に帰れるのだろうか。

「兎に角さ、イケ。ぼくん家(ち)に行こうよ。歩けるまで、待つから。おじいちゃんに、頼

むから」



 イケは、あっさりとそう言った。

「あーッ、良かったァ。イケは、ぼくの言うこと全部に反対するからさ。病院も警察も却下だ

もんね、まったく。どうしようもないんだから」

「どうしようも、あるだろッ。こんなに素直な、イケちゃん捕まえてよ」

 イケは、にやっと笑った。ぼくは、それを見て少し安心した。久しぶりに見るイケの笑い顔

だった。

「ルイッ。オレの顔、血だらけか?やばいか?」

「うん、やばい」

「どっかで、(タオル濡らして)拭かなきゃな。目立つの、今日はやばいからよ。お前のじい

ちゃんに腰ぬかされちゃうだろ?お前、(拭く物)持ってるか」

「ハンカチなら、持ってるよ」



「すげくないよ。だって牧野先生、いつも、持って来なさいって言ってるじゃん。ポケットに

入れてあるよ、ほら。あ、でも先生、持ち物検査しないね、何でだろう?」

「面倒くせーんだろ?マキちゃん(牧野先生)、忙しいからよ」

「そうかなぁ?いや、そうじゃないよ。先生、ぼくたちを信じてるんだよ」

「お前、真面目だな。親父に似て秀才だよ。あはは」



イケの前に引かれていた線を、イケは、今まで越えようとしなかった。そのうちに、線は、複

雑に絡まって、越えようとした時には、がんじがらめにされて超えられなくなっていた。

それをやっと、今日、越えたのだ!そんな晴れやかな明るさが、あった!

ぼくは、この明るさを信じたい!イケが戦って手に入れた大事なものだから。

もう絶対に、奴らは、イケを狙いませんように!

「イケの父さんさ。イケが、前、ぼくん家に泊まった時、怒らなかった?」

 ぼくは、それが気になっていた。

「怒らねーよ。オレにとっちゃ、他人だよッ。あんな親父、いない方がいいんだ。そしたら

よ、オレ自由になって、堂々とお袋の所へ行けるぜ」

「母さんの側でくらしたいんだ、イケ?」

「親父とくらすのが、嫌なだけだよ。うぜー、んだよ」

「でも、イケのほんとの父さんじゃん?羨ましいよ」

「あんなの、他人だね。だから、お袋だって出てってしまったんだよ。オレの方がよ、親父よ

りよっぽどしっかりしてるぜ。何の役にもたたねー。親父なんかッ」

 イケは、はき捨てるように言った。

「そんなこと、ないよ。イケッ」

「お前に、何が分かるんだよ。いい加減なこと、言うなッ」

 イケは、ムスッとして言った。

「いい加減なことなんか、言ってないよ。ぼくは、イケが羨ましいんだよ。父さんが生きて

て。どんなに酷い父さんだって、生きててくれたら、いつかきっと、好きになれると思う。だ

って話ができるじゃん。どんなに、そっぽを向いてたって、側にいてくれるじゃん。

 ぼくはね、父さんを尊敬してる。父さんは、ね。線路に落ちた他所の子を助けるために、飛

び込んでいったんだ。他所の子は助かったけど・・・。父さんは死んだ。

イケに話したことあるよね?」

「聞いてるよ。お前、めそめそしながら話してたじゃん。オレの親父も、お前の父ちゃんみた

いに格好良かったら、な。そしたら、オレだって尊敬してやるよ。自分がだらしねーくせに、

オレにがみがみ言いやがって、よォ。

お前父ちゃんの話をしても、めそめそしなくなったな?」

「そうだよ。ぼくは、前だけを見て生きることにしたから。過去はもうどんなにしたって、変

えられないだろ?ぼくは以前(まえ)ね。うじうじしてたら、何か宇宙大の力が働いて、ぼく

に同情してくれて(過去を)、変えてもらえると思ってた気がするんだよ。でも、変えてもら

えるなんて、どんな力が働いたって、できっこないんだ。そんなことを考えていたぼくは、頭

が変だったんだよ。ほんとに、バカだったんだよ。

でも、イケには、変えられる未来(これから)があるよ。だって、父さんが生きているからだ

よ!」

「お前は、頭が変でも、バカでもねーよ」

 イケは、短くそう言うと黙ってしまった。

                           つづく








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Last updated  Mar 3, 2010 11:13:27 PM
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