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千菊丸2151 @ お久しぶりです。 仙人草さま、お久しぶりです。 イケ君…
mifess @ お元気ですか 2012/03/01 仙人草21さん >その後、記事の掲載が進…
仙人草21 @ こんばんは。    mifessさんへ お元気でお過ごし…
mifess @ お元気でいらっしゃいますか? 生活環境が種々変化してくると、言葉に出…
仙人草21 @ kyonkyonさん、こんにちは! いつも温かいコメント、ありがとうござい…

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俳ジャッ句      耀梨(ようり)さん
Mar 7, 2010
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 茶化すことの多いイケが、何だか真剣な目つきだった。

イケは、自分の父さんのことを、こんなふうに言うけど、本当は心配してる。父さんのことが

心配で、この間も、帰ってしまったし。

心の中は、複雑なんだ。

ぼくだって、複雑だった。ずーっと、苦しかった。

 父さんが死んだ時。

世界は終わってしまったと思った。

 その後で、母さんとぼくには血のつながりがないことを、立ち聞きで知った時。



ぼくは、もう生きていけないと思った。ぼくの中には、絶望しかなかった。

どんなに母さんが、ぼくを心配しても、ぼくは、それを拒否した。

「塁は、私の子!私の子!」と、母さんが滂沱しながら叫んでも、ぼくは、撥ねつけた。

母さんを許せないと思っていた。

ぼくと血のつながりがないことを隠していたからだ!

あんなに愛してた父さんを裏切って(父さんは、もう、この世にいなくなって三年経っていた

けど)、山中さんと結婚しようとしたことも許せなかった!

でも、母さんは、ぼくの気持ちを一番大事にしてくれたことが、今なら分かる。

山中さんとの結婚を、ぼくの気持ちを考えて、本気でやめようとしたからだ。

でも、おじいちゃんは、母さんの結婚を切望(のぞ)んだ。自分の息子(ぼくの父さん)のお

嫁さんだった人(ぼくの母さん)の結婚を、何故、切望むのか、ぼくには理解できなかった。



いた。

でも、ぼくは、母さんたちを選ばずに、おじいちゃんを選ぼうとした。

おじいちゃんは、ぼくに出て行け!と怒鳴った。母さんのところへ行け!と命令した。

母さんとぼくは血がつながっていないのに、だ。

 ぼくに、残されたのは、一直線に死へ向かう道だった。絶望しかなかった。ぼくの住める場



そして・・・。ぼくは、イケに助けられたのだ。きっと、父さんにも、かもしれない。

 何だか、いろんなことが、何年も前のような気がする。浦島太郎が出てきそうな、そんな昔

話のような感じがするほど、遠い。でも、そんなに遠い話ではないのだ。

 イケもぼくも、草の中で考えていた。いつの間にか寝転んで。

ぼくは、空を見た。真っ青な空だった。大きな空だった。

ぼくたちの、希望、悲しみや苦しみも溶かし込んで、それを深い深い青にしているような気が

した。雨の日も、雲の日も、その奥には絶対変わることのない青い空が輝いているのだ。

人は、全ての人を受け止めてくれるその空を見て、元気を出し、生きようとするのかもしれな

い。

でも、あの空に希望だけしかなかったら、どうだろう。きっと、つまんないかもしれない。希

望がどんなものか、分からなくなってしまいそう。やっぱり、悲しみや苦しみがあることで、

希望の尊さが計れるのかもしれない。だからこそ、この青は深くて美しいんだ。

 無限岬の風がいつの間にか変わっていた。

人を拒むように、寄せつけないように吹いていた風は、穏やかになっていた。

無限岬の別の顔だった。無限岬は、こんな顔も持っていたのだ。ちょっと、信じられないぐら

いだ。ぼくは、いつも荒れ狂っている無限岬しか知らなかった。

 海に咲く花を、呼び寄せたのは無限岬だったのかもしれない。

伝説の花は、後の世界へと、無限に咲き続けていくのだろう。

 突然、ぼくの中で、巨大な地震が起きた!

 イケは、【例え、奴らに殺されても生きてやる】と、言っていたことがあった!

この世界で何よりも大切なもの。偉大なもの。それは、一人一人の命だったのだ!!!

花が継いでいく命。イケの命。ぼくの命。人の命。地球に住む生きものの命。

 ぼくは、あの時、無限岬のてっぺんから、荒れ狂う海に身を投げようとした。

父さんは、ぼくにそれを、教えようとしたんだ!

父さんは、【来るなーッ】と叫んでぼくを押し上げたんだ!この世にいない父さんだけど、き

っとそうだったんだと、思う。

イケは、ぼくの心に、それを、叩き込んだんだ!

イケは、【逝くなーッ】と怒鳴って、ぼくを引っ張りあげたんだ!

 ぼくは、何て、浅はかだったんだろう!自分の命を絶とうとするなんて!

 あんなことをしようとした自分が、悔やしくてて仕方ない。

ぼくは、イケに助けられたのだ!

ぼくが生きている限り、これは、忘れてはいけないことだ!

なのに、ぼくは気づかずに、あっさりしすぎていた。

ぼくは、やっと、そのことが分かったのだ。

「イケ!ごめん!ありがとう!ありがとう!」

 ぼくは、叫んでいた。

イケは、びっくりして何事かと、ぼくを見た。絶句したまま。

                           つづく










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Last updated  Mar 8, 2010 12:01:59 AM
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