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2005.12.05
死に至らない病 11
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カテゴリ未分類
怖い。
全てを知りたいくせに、知ることが怖い。
けれど知らないことも怖い。
あの海の綺麗な場所。その場所から帰ってきて2週間。
一度は決めたことでも、日常に戻って夫との生活が始まれば、
どんな些細なことでもひとつひとつが幸せ過ぎて。
全てを知れば、それが壊れてしまうかも知れないと思ったら、
私は全く動けないままでいた。
このまま、何も知らずに居れば、
私は何でも無い女だから。
それを壊すほどの力も、まして行動に移るだけの勇気すら無い。
そうして、私が動けないままでいる内に、
全てを知るときが来た。
夫の検診。私は付き添いでまたあの病院にいた。
『病』は進行しても身体を蝕むことは無い。
むしろ、『永遠』の若さを与え、他の病気全てから守ってくれる。
そして、『治す』方法は無い。
はっきり言って無駄とも思える行為ではあるのだけれど。
それでも母も夫も月に一度『検診』を受ける。
病院の待合室で夫の検診を待つ間、私は読みかけの本を開いたけれど、
幾ら考えたってどうにもならないし、そして死ぬ訳でもない病を心配しても仕方が無いのだけれど、
それでも私の胸から不安が消えることなんか無い。
何より夫の言葉も気になる。
『永遠』そして『望み』。
ぼうっとしたまま同じページを見つめ続けている私は、
ガチャリ、と診察室のドアが開いて。
夫が頭を下げながら出てくる。
「ああ、お待たせ」
私に向かって微笑む彼の顔を見ると、不安は少しだけ無くなって、
ほ、っとした自分の感情を感じるのだけれど。
「どうだった?」
私は答えの分かりきっている質問で訪ねて、
「ん、変わらず」
分かりきっている答えを夫が答える。
こうやって。このままでもいいのかも知れない。
知らなくたっていいことなんて、この世には幾らでもある。
「行こうか」
そう言って歩き出す夫の後ろを、私はただついて行くだけで、それだけでも良い。
私はこうやって今日も、真実から遠ざかろうとした。
その時に。
「杉村さん」
声の方に私と夫が同時に振り向く。
少しだけ年配の品の良さそうな男性がそこに立っていた。
穏やかな表情をした、とても好感が持てる面持ちで、
そして身なりも綺麗にしている男性だった。
「やっぱり、杉村さん。お久し振りです」
「ああ、ああお久し振りです」
夫がやや不自然な笑顔を見せたのを、私は見過ごさなかった。
「本当にお久し振りです。っと、失礼。奥様ですか?」
男性がこちらに向き直ったので、私は軽く会釈をする。
「そうですか、ご結婚なさったんですね。おめでとうございます」
男性はにっこりと笑って、
「ええと、こちらにいらっしゃるということは、例の…?」
その言葉を慌てて遮るように夫が言う。
「まぁ、そうです。そうなんですよ」
すぐにピンと来た。この男性。知ってる。『病』の、そして夫の『望み』のことも。
「そうですか、それは良かった」
満足そうに男性は頷き、また口を開く。
「奥様の方は…?」
「すいません、せっかくお久し振りにお会いしたんですが、急ぎますので」
夫は会釈をしてすぐに振り向き、歩き出す。
私も男性に会釈して夫のあとを慌てて追う。
私?私の方も?
その時には、もう夫に全てを聞かなければいけないと思った。
車に乗ると、すぐに私は切り出した。
「さっきの男性、どういった…」
「君には関係ない」
いつに無く険しい表情で彼が答える。
「ある」
夫は少しびっくりした顔で私を見る。
普段、私はそう強い調子で喋らない。だから。
「あの人、あなたが『病』になること、知ってる風だった」
こんなに問い詰める口調は、たぶん、初めて。
「それに。私のことも言ってた」
それきり黙りこんで車を走らせ、家へと向かう。
帰り道。見慣れた街路樹が両脇に生える道。
大きなショッピングセンターを曲がって、広い公園が見えて。
「分かった」
そこで、夫が口を開く。
「もう少し。もう少ししたら話そうと思ってた」
すごくゆっくりと周りの景色が動いていくように見える。
夫は正面を向いたまま。そして私はその横顔を見てる。
マンションの帰り道じゃない、道路を左折して。
ああ、この道は。
あの、高台の上の公園に向かう道。
彼が私にプロポーズした公園。
車を停めて、ふたりで高台を登っていった。
木が生い茂る遊歩道。
2つ並んだベンチ。
街が見える。
「ずっと昔から、知ってた」
彼が口を開く。
「なにを?」
「病のこと」
「…どうし…て…?」
「君は、あれが急に降って湧いた病だと思ってるだろうね」
「違う…の?」
公園にはそれなりに人影があって、子供たちの声も聞こえる。
けれどそれらは遠く遠く聞こえてくるようだった。
夫はしばらく黙って。
それから、ゆっくりと話し始めた。
ここで、私は全てを知った。
知りたかったこと。
だけど。
夏が終わろうとしていたこの日。
陽が傾いて少し肌寒い風が吹いて。
私は進む先を見失ってしまった。
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Last updated 2005.12.06 02:31:28
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