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2005.03.26
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九十九十九

~講談社ノベルス~

<注記>書いていると、ネタばれになっているととらえられうる記述になってきたため、先入観なしで本書を読もうと思う方は、以下の記述は読まないでください。

 基本的には、内容紹介、それから感想という形で本の紹介(本来の目的は自分のためのメモ)をしてきていますが、本書は内容紹介が書きづらいので、まとめて書きます。
 構造は、第一話は第二話の「僕」に届けられた原稿であり、その第二話も第三話の「僕」に届けられた原稿であり… というかたちで、入れ子構造、というか、それ以前の「話」はその「話」の一人称である「僕」らに届けられる、現実の「僕」の事実をふまえたフィクションである、というもの(自分でも何言っているのかよく分からない)。
 僕は生まれてから14人の手をいったりきたりしながら、結局鈴木君の家に落ち着くことになるが、鈴木君は僕の目をえぐりぬき耳をそぎおとし水銀を飲ませる。でも殺さない。鈴木君は刑務所に入り、彼女の恋人の加藤君にひきとられることになる。加藤家は、福井県西暁町にある。加藤家では地下室に閉じこめられ、加藤家の子供たちにペットとして扱われる。僕の目を見た人は気絶してしまうので、サングラスは必須。しかし、僕の目を見ても気絶しないのが、血のつながらない弟、ツトム(彼は後に大爆笑カレーと名乗る名探偵として活躍する)。
西暁町で殺人事件が起こったのをきっかけに、僕は家を出て、事件を解決し、加藤家から逃げる。
 以上が、第一話の簡単な流れ。以降、僕-九十九十九は、ツトムを名乗りながら、いろんな恋人ととともに暮らし、いろんな事件を解決し、そしてその生活は崩壊していく。
 『聖書』の見立て。何人もの恋人(妻)。僕をペットとして扱っていた、セシルとセリカ。僕-九十九十九の一人称による小説を送ってくる清涼院流水。講談社文芸第三出版部の主要な人物。なんというかもうごちゃごちゃしていて「よく分からない」と思いながら読み進めたのですが、第二話で、<清涼院流水>は<もうお前とは喋ってやんねー世><意味判らせてやらねー世>だそうなので、意味分からなくて正解なのだと思う。だってこれらは、<清涼院流水>の作品なんでしょう?
 さて、第一話から順番に読み進めていた私は、「あれ?」とあるところでとまってしまいました。誤記?目次に戻っていると、私が読み飛ばしたわけでも誤記でもなくて、そういう順番なのだと分かりました。このあたりの作用もよく分からないのです。第四話がやたら意味不明の話だという印象は強いのですが。

 読み返せばよいことなのですが、『土か煙か食い物』あるいは『暗闇の中で子供』のどちらかにだったと思うのですが、物語は嘘だが、嘘の物語でこそ伝えられる真実がある、ということが書かれていたと思います。とても好きな一節で-でも読んだ当時は、まだ付箋を貼る習慣がなかったものですから、貼っていません…-、それは本書にもいえると思うのです。
 最後に置かれた話で、本書は、「運命」について、こういう形で語ってくれているのではないか、と、自分なりに思ったのでした。あと、「神」ですかね。
 私は高校は、普通科を選びました。このとき、(当時も今も全く考えていませんでしたが)他の科を選ぶ自分は捨てられています。次の方がもっと(自分には)現実味がありますが、大学で文学部に入り西洋史を専攻したことで、心理学をやりたかった自分、教育学部に入りたかった自分は捨てられています。教員になることを強く望んだとき、私は大学院に進学するという自分を捨てましたし、いろいろ考えて大学院進学を決めたとき、私は教員を志す自分と、児童福祉、社会福祉に携わりたいという自分を捨てました。もし、その時々で捨てていった自分が、それぞれの道を歩んでいたとしたら。しかしその道は、「オリジナル」であるところの「私」が、その時々では断っているわけで(将来的に、その道に戻ることは可能性として否定できませんが)、存在しえなかった「私」が、「私」のことを憎んで「私」を殺しにきたら-。
 付記。猫のイゲラ君が登場します。『みんな元気。』収録の、「我が家のトトロ」にも、猫のイゲラ君は登場します。さすがにこの名前は覚えていました。名前といえば、大爆笑カレーというのもどうかなぁ、と思いますが(笑)。
 同じJDCトリビュートでも、西尾維新さんのとは全く方向性の違う話で、西尾さんのは比較的ミステリに近い風情がありますが、こちらは完全に舞城ワールドとなっております(って、西尾さんのも完全に西尾ワールドですが、まだ清涼院流水さんの雰囲気に近いかな、という印象をもっています)。





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Last updated  2005.10.15 19:07:12
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