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2005.12.28
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乾くるみ『林真紅郎と五つの謎』
~カッパ・ノベルス~

「いちばん奥の個室」一部で有名なバンドのライブに、姪の保護者として連れ添った真紅郎。ライブの最後の曲の前に、ちょっとしたマジックが披露された。箱の中に入った女性。箱は鎖で空中に持ち上げられ、そして次に開いたときには、そこから女性がいなくなっていた。
…ところが、その女性がライブの終了後、トイレの個室で、頭から血を流しているのが発見される。
「ひいらぎ駅の怪」大雨の夜、友人とともにひいらぎ駅にいた真紅郎。そこで、女性が階段から転げ落ちるという事故が起こった。さらに、現場に居合わせた別の女性のカメラも紛失していた。小規模な駅で、そこにいる限られた人々以外に、外部からきた人がいないことが分かっているが、誰もカメラを持っていなかった。
「陽炎のように」友人の妻が亡くなった。告別式に友人とその妻とともに参列した真紅郎。その帰り道から、周囲の人々が彼のあたりを怪訝に見ることが重なる。じーっと見つめてくる女性。窓際に座った真紅郎のあたりを見ながら、なにかの理由でお盆を落としてしまったレストランの店員。また、亡くなった女性とその夫をめぐり、真紅郎たちは、最近のテキリマ事件とからめながら、議論を進めていく。
「過去から来た暗号」小学校時代の友人でばったり再会した真紅郎。友人は、真紅郎が暗号遊びをしていたことを懐かしげに語った。しかも、その解読表はなくしてしまったようだが、暗号文の一つは、まだ残っているという。届けてもらったその年賀状を見ながら、真紅郎は解読作業を進めていく。
「雪とボウガンのパズル」大学で教えていた頃に知っていた学生と、初雪の早朝、ばったり出会った真紅郎。犬の散歩をしていたのだが、犬がその学生を気に入ったようで、二人は結局学生の下宿先まで歩く。ところがそこでは、変死事件が起こっていた。建物と塀に挟まれた狭い裏庭で、学生が死んでいた。ボウガンの矢が突き刺さっていた。怪しい足跡もなく、二階の被害者の部屋の玄関は、内側から施錠されていた。

 法医学教室に勤務していた林真紅郎さん。彼は、最愛の妻を亡くしてから、職につかず、ぶらぶら生活しています。林家が裕福なために、そんな生活もできるのだとか。

 二話目は、モラルの話がうまくからんできていて、面白かったです。
 三話目は、かなり怖かったです。私が幽霊関係の話が苦手なのもあるのですが、テキリマをめぐる話は、小説という虚構の中でも、さらに想像の話なのに、どこかリアルで。しかもお食事中に、手を切ってどうこう、という話をするわけですよ。 …私も、一般的には食事中はふさわしくないんじゃないかな、という話でもって、食事中に盛り上がることはあるわけですが…。カニバリズムとか。
 第四話。本書の中で一番面白かったような。たしかに、暗号解読自体は読んでいて退屈かもしれません。そうとう伏線、というか、真紅郎さんが暗号を解読する思考が忠実にトレースされているので、くどいとさえいえると思います。でも私はそこが楽しめましたし、そうした単調な作業の中に起こるある「ドラマ」がうまく生きているのに感動しました。
 第五話は、やるせない結末です。それこそ今日西尾さんの作品の感想のところでずいぶん紹介したジョジョを例にとれば、第6部のマックイイーンの過去みたいな。
 全体を通して、素直に楽しめる作品でした。





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Last updated  2005.12.28 22:42:30
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