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2006.02.16
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エデンの命題

~カッパノベルス~

「エデンの命題」アスペルガー症候群のぼく-ザッカリ・カハネは、アスピー・エデンという教育施設に入れられていた。ここは、アスペルガー症候群と診断された中でも、学力が高い人々を集めた施設である。多くは、ここに入るまでに、いじめなどを受けていた。ぼくもその一人。しかし、この施設では、勉強に運動に、充実した生活が送ることができた。ここで知り合ったティアと、ぼくは親密になった。しかし、ある日、ティアが手術のために施設を出てから、ぼくは大きな陰謀に巻き込まれていくことになる。
「ヘルター・スケルター」頭部を怪我し、記憶に障害をもっているらしい俺。俺の脳には、異常があるようだった。女医に、脳を活性化するという薬を飲まされ、その薬の効果の続く時間-五時間以内に記憶を戻さなければ、俺は生涯ベッドの上での生活になる可能性があると宣告される。女医の言葉にうながされながら、俺は少しずつ過去を思い出していく。
 以下、それぞれの作品について感想を。
「エデンの命題」。
 私は学生の頃、アスペルガー症候群と診断された子どもたち、線引きは難しいのですが、自閉症、高機能自閉症と診断されている子どもたちの、託児のボランティアをしていたことがあります。本書の中でも言われていますが、「自閉症」とは、自分の中にひきこもる-いわばひきこもりのように誤解されることもあると思うのですが、決してそうではありません。すごく活発ですし、元気ですし。周囲の人にあわせるのが苦手で、周囲の人には、そこが受け入れがたく感じてしまう。正直、私も一緒に遊ぶ中で、対応に困ってしまうこともありました。思うところがあったのもありますが、自閉症について、ほとんど勉強もしていなかったのもあるのでしょう。
 ともあれ、この中編は、そのアスペルガー症候群の少年、ザッカリによる一人称で話が進みます。旧約聖書の解釈-創世記の蛇、禁断の木の実、アダムの肋から作られたイヴ、これらについての話を、興味深く読みました。私は中世のキリスト教関係の勉強をしていますが、聖書の解釈などは不勉強でして、カインの妻の話については、なるほどと思いました。まったく、矛盾がありますね。
 クローンや脳について、島田さんはずいぶん詳しいようで、既にいくつかの著作の中で、これらを題材にした物語を書いておられます。それらの作品を連想しながら、本作を読みました。

 いろいろと違和感を感じながら読みました。最後は、あぁ、なるほど、と納得。こちらは、脳の仕組みについて、詳しく書いてあります。また、「エデンの命題」の主題がアスペルガー症候群と旧約聖書の二本立てとするなら、こちらの作品は、脳(の異常)とヴェトナム戦争の二本立てといえるでしょうか。ES細胞、インシュリンなどなど、最近よく耳にする言葉がよく出てきて、勉強になります(私はあまり分かっていませんが…)。勉強しなくては。
 全体を通して、やっぱり島田さんの小説は面白いなぁ、と思いました。吉敷さんのシリーズはほとんど読んでいませんし、御手洗さんシリーズ以外の短編集ではあんまりぱっとしないと感じる作品もありますけれど…。





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Last updated  2006.02.16 13:07:47
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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