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2007.04.03
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Agostino Paravicini Bagliani (traduit de l'italien par Luc Hersant), "Ages de la vie"


 ジャック・ル・ゴフとジャン=クロード・シュミットの編による『中世西洋の批判的事典』より、「人生の諸時期」の項目を紹介します。
 この事典については、いずれ編者序文を読んだときに、掲載項目も紹介する記事を書きたいと思うのですが、約80項目の記事、 1240ページ近い本です。当然高かったので、修論で一部使ったものの、これからも読んでいきたい一冊です。
 前置きが長くなりましたが、「人生の諸時期」の項目について、簡単に整理しておきます。

[序]
 中世において、人生は、いくつかの数からなる図式で考えられていました。この図式は、ギリシア・ローマの遺産であるとともに、キリスト教的な象徴的再解釈がなされた図式です。その数は、3,4,5,6,7,12が主でした。

人生の三つの時期
 人生に三つの時期を想定する考えは、成長・安定(発展)・衰退という一連の流れに基づいています。 6-7世紀のグレゴリウス大教皇は、子供期・青年期・老年期という三図式を示しています。
 ここでは、イエスが生まれたときに東方から訪れ、黄金、乳香、没薬を捧げた三博士(いつからか、メルキオール、ガスパール、バルタザールの名前がつけられています)について少し詳しく書かれています。メルキオールは長髪、髭の長い老人、ガスパールはひげがなく、赤い髪、バルタザールは黒く豊かな髭をしていて、赤いチュニカを着て、そのマントは白く、靴は緑色だといいます。それぞれ、老人、中年、若者を示すとか。三博士の遺体だとされる遺体が1158年にミラノで発見され、1164年にケルンに移葬されるのですが、彼らの年齢は若い方から順に15歳、30歳、60歳と思われたそうです(三博士については、ギアリ[1999]も参照)。

人生の四つの時期

子供―湿、熱;春;アダム~ノア
若者―湿(熱の誤り?)、乾;夏;ノア~アブラハム
大人―乾、冷;秋;アブラハム~モーセ
老人―冷、湿;冬;モーセ~キリスト
 湿―乾、冷―熱というのは、色にもあてはめられた、中世でなにかの性質を示すときに用いられた尺度といえばよいでしょうか。人生の四つの時期は季節に対応し、また、人類の四つの世代にも対応します。さらに、水・土・空気・火という四つの要素などなど、人生の四つの時期と結びつけられた象徴は多々あります(聖書にも、4に関連するものがいろいろあります)。

人生の五つ、六つの時期
 五つの時期についてはあまりふれられていませんので、ここでは人生の六つの時期について。
 アウグスティヌスは、人生をinfantia, pueritia, adolescentia, iuventus, gravitas, senectusの6つに分け、これに神の創造(労働)の六日間を対応させます。七日目の休息は、地上の人間は体験できませんが、来世で永遠の休息を得られるというのですね。ということで、人生の最後の段階(老年)は、肉体的には衰えた時期ですが、霊的な刷新のはじまる時期―霊的には高い位置にある時期になります。

人生の七つの時期
 ここで興味深いのは、人生の七つの時期と七つの惑星の対応です。
 月…急速な成長、不完全さ
 水星…精神の理性の模範、知恵の種をまく
 金星…精管を刺激、若さの激しさとぬけめなさ

 火星…人生の厳格さと苦悩
 木星…肉体労働の断念
 土星…精神の衰弱
 この七つが、それぞれの人生の時期を刺激するというのです。
 蛇足ですが、七つの惑星と七大罪の対応については勉強したことがあるので、また機会があれば紹介したいと思います。

人生の12の時期


古代の遺産と中世の刷新
 いままでは、人生の図式の紹介でしたが、この節では、それらの分析がなされます。
 3,4,7は古代に由来する図式、5,6は教父に由来する図式、12は中世独自の図式です(上の整理でははしょりましたが、このあたりの事情は本文には記されています)。
 ギリシア・ローマ的な古代の図式は、人間の生物学的な発展(成長・発展・衰退)を強調し、キリスト教は、それを人類の救済史に組み込んだといいます。キリスト教の考えでは、倫理的・霊的な価値の持続的な発展が強調されるため、老年期は衰退の時期というよりも、霊的には最高の時期ということになります。
 その他、イエスは30代で洗礼を受けたことから、30代が最高の年齢と考えられたことなどといったことが紹介されます。

 この項目自体は、やはり人生の諸時期の図式を紹介することがメインなので、興味がなければ面白くないかもしれません。むしろ、参考文献にひかれた中世のライフサイクルに関する文献などの方が興味深く、読んでみたいです。

この記事を書くにあたっての参考文献
パトリック・ギアリ(杉崎泰一郎訳)『死者と生きる中世―ヨーロッパ封建社会における死生観の変遷』白水社、1999年

~訂正~
本論の著者の名前は、Paravicini Baglianiが姓でした(Baglianiのみが姓のように表記していたので訂正しました)。

著者の姓は、パラヴィチーニ・バッリアーニと読むようです。池上俊一『儀礼と象徴の中世』にそのようにありましたので、訂正しました。[2008.12.23]





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Last updated  2008.12.23 11:43:50
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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