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2007.04.24
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島田荘司『北の夕鶴2/3の殺人』


 吉敷竹史シリーズ第三作の長編です。以下、内容紹介と感想を。

 1984年、5年前に別れた妻・加納通子から吉敷に電話がかかってきた。声を聞きたいだけだったという彼女だが、<ゆうづる>に乗ることは分かった。吉敷は上野に行き、彼女が<ゆうづる9号>に乗っているのを確認した。
 ところが、その<ゆうづる9号>で殺人事件が起こったという。被害者が乗っていた寝台は、通子が乗った席だった。彫金師の通子が作った、鶴をかたどったスプーンも発見されたため、彼女が殺されたのかと考えた吉敷は、青森に向かった。
 捜査の状況を確認し、被害者が通子ではないことは分かった。しかし、今度は、彼女が加害者のように吉敷には思われたのだった。
 通子を捜して、盛岡の、二人でよく行っていた喫茶店を訪れた吉敷。喫茶店のママから、通子が釧路に向かったらしいと考えた吉敷は、すぐに釧路へ向かう。しかし、そこでは、さらなる事件が吉敷を待ち受けていた。加納通子は、吉敷と別れた後、釧路に住んでいたのだが、彼女のマンションの部屋で、二人の女性が殺されていたという。通子は失踪していた。事件自体も、マンションに伝わる<夜泣き石>の伝説や、逆さに歩く鎧兜、現場を訪れることのできなかったはずの被害者など、数々の謎に満ちていた。
 通子は、この事件の犯人ではない。そう考えた吉敷は、彼女を救うために奔走する。

 これは面白かったです。マンションで起こった事件にまつわる謎の数々も非常に魅力的で、わくわくしました。まぁ、やたらと現場付近の見取り図が出てくるので、それなりに<予感>を抱きながら読んだわけですが、それでもわくわくするものです。

 温厚な吉敷さんの思わぬ一面が見えたり、ひどい目にあったり…。吉敷さんのシリーズを全て読んでいるわけではありませんが、これほどの状況になったことはそうそうないのでは、と思いました。『確率2/2の死』では、かなり走らされていましたが…。
 釧路では、署の刑事たちにないがしろにされる吉敷さんですが、そこに牛越刑事が登場するのも嬉しかったですね。電話だけですが、中村刑事の登場もよかったです。
 ちょっと残念だったのは(物語とは関係ないのですが)、興をそぐほどの誤字があったことですね。藤倉兄弟となるべきところが吉敷兄弟となっていて…。ただ、私が古本で買ったのは初版だったので、後の刷あるいは改訂版では訂正されていることと思います。
 そんな点はありましたが、面白い作品でした。良い読書体験でした。





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Last updated  2007.04.24 06:37:17
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