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2007.05.22
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~講談社文庫、1995年~

 作家&探偵、法月綸太郎シリーズの長編です。この次の長編が『生首に聞いてみろ』だと思っていましたが、そういえば『二の悲劇』があいだに入るはずです。
 とまれ、内容紹介と感想を。

 ラジオ番組の収録を終えた中山美和子(畠中有里奈)は、マネージャーの湯浅景子とともに帰路につこうとしたが、湯浅に電話がかかってきたという。そこで、一人で待っていた美和子に、一人の男が声をかけてきた。男は、17年前の美和子の母親の事件の話を出し、美和子を倉庫に連れ込む。そこでもみ合いになるうちに、美和子は男にナイフをつきたてられる。
   *
 実際には、美和子に外傷はなく、男は、近くの公園で死んでいた。美和子は、『月蝕荘』の事件で知り合った法月家に助けを求める。綸太郎は、美和子の話が正しいという前提に立ち、男(バイトの学生)の死にまつわるいくつもの矛盾の解明に乗り出すことになる。
   *
 しかし、美和子が、17年前に母親が兄と父親を殺したという事件をひきずり、自分も人殺しの血が流れていると考え続け、あるきっかけにより精神的に崩壊しかけたとき、綸太郎もまた、西村頼子の事件からひいていた悲しみや絶望に苦しむことになる。しかし、一人の同級生との再会により、綸太郎はあらためて美和子の事件の解明に乗り出す。


 しかし、本書の主眼は、美和子さんにまつわる過去の事件の謎と解明、そして…あるいはむしろ、その事件の呪縛から逃れられない美和子さんの絶望であるといえるでしょう。その苦しみは、『頼子のために』の事件から尾を引いている(作中)法月さんの苦しみをさらに増すことになります。なお、本書は西村頼子さんに捧げられています。
 そして、美和子さんは『雪密室』の関係者ですので、『雪密室』と『頼子のために』を事前に読んでおかないと、ぴんとこない部分もいくらかあるかと思います。
 とまれ、とにかく(作中の)法月さんが悩んでいる作品です。ずいぶんうつうつとした雰囲気ですね。途中、作中人物によるアイドル学(?)についての話などはテンションも高く、興味深く読んだのですが…。文庫版あとがきを読むと、作者の法月さんも相当(文庫版出版の頃)不調だったようで、読んでいて不安にさえなりました…。
 けれども、本書のラストには救いがあり、良かったです。
 数年ぶりの再読なのですが、これで、『頼子のために』『一の悲劇』『ふたたび赤い悪夢』の三部作をあらためて読了したことになります。『二の悲劇』はどんな話だったかほとんど覚えていないのですが、『頼子のために』という物語が、法月さんの中でかなり重要な位置にある作品なのだろうと感じました。個人的に、法月さんの作品の中で、『頼子のために』が最も好きな作品だということもあるかもしれませんが。





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Last updated  2007.05.22 06:52:31
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