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2007.09.01
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~講談社ノベルス、1996年第1刷(1997年第3刷)~

 有栖川さんの、火村先生が探偵役をつとめる<国名シリーズ>第三作、6編の短編を収録する短編集です。それぞれの簡単な内容紹介と感想を。

「ブラジル蝶の謎」 孤島に暮らしていた男が、二週間前に亡くなった兄(サラ金社長)の家に戻った際、兄と近しい三人と食事をしたが、三人とは軋轢があった。その、孤島から戻ってきた男が、自宅リビングで殺されていた。現場では、奇妙なことに、亡き兄が集めていたブラジル蝶のコレクションが、天井に何十羽もとめられていた。

「妄想日記」 自分が運転した際、事故を起こしてしまい、息子を失い、妻もまた自殺してしまった男は、ノイローゼになり、家の地下室で主に暮らしていた。その男が、自宅の庭で焼け死んだ。精神科医である彼の父によれば、男は言葉を発さないばかりか、奇妙な文字で日記を書いていたという。

「彼女か彼か」 女装を趣味としていた男が殺された。その父親の遺産をめぐって争っていた隠し子と自称する男と従姉、そして、奇妙な三角関係のために男に嫉妬した女の三人のうち誰かが犯人と思われたが、みな、抱えていた問題は解決に向かっていたという。

「鍵」 建築資材メーカー社長の秘書が殺された。その日、甘木社長の姉、妻、秘書は、隣家のパーティに参加していた。そのパーティの中で、イヤリングの紛失騒動もあった後の、それは事件だった。死体のそばに落ちていた鍵―ドアや宝石箱などの鍵ではなさそうなそれは、いったい何の鍵だったのか。

「人喰いの滝」 雪の降った翌朝、老人が川の岩場に転落して死亡した。老人の足跡は、迷うことなくまっすぐに崖に向かっており、また、衣類に血液でなにかを書き残そうなどしていたということから、殺人と思われたが、彼を突き落としたと考えられる犯人の足跡はなかった。

「蝶々がはばたく」 アリスが、旅行のため電車に乗っている中で、隣の乗客から聞いた不可解な事件。35年前、その男は気心の知れた仲間とともに、伊豆に二泊三日の旅行に行っていた。三日目の朝、学生闘争に参加しつつ悩みを抱いていた男と、その恋人が失踪したという。玄関と裏口から出た形跡はなく、窓の外は、浜辺であるにもかかわらず、足跡が残っていなかった。



 何度目かの再読です。一編を除き、全体的にあまり印象に残っていなかったのですが、いやはや、これが面白かったです。
「彼女か彼か」が、面白かったですね。真相解明のところでは、なるほど!と思わずにいられませんでした。やられました。
「人喰いの滝」と「蝶々がはばたく」は、いずれも、いわゆる足跡のない密室(?)ものです。「人喰いの滝」も面白いのですが、なんといっても、「蝶々がはばたく」は秀作だと思います。この作品は、有栖川さんの短編の中で最も印象的で、好きな作品です。足跡トリック(?)のミステリとしても面白いのですが、一つの物語として、味わい深いです。





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Last updated  2007.09.01 06:51:58
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