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2009.07.12
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~メディアファクトリー、2005年~

 森博嗣さんのエッセイ集です。
 まずはおおきな構成だけ掲げた上で、印象に残ったところについて書いておきます。

ーーー
第1章 森語り―自作小説のあとがき
第2章 森読書―書評や本に関するエッセィ
第3章 森人脈―作品解説から
第4章 森好み―趣味に関するエッセィ


文庫化に際して
解説 松田悟志
ーーー

 Vシリーズのあとがきが中心の第1章から、興味深く読みました。
 第2章、第3章の本についてのエッセイや解説も面白いです。
 第5章の「近頃の子供たちときたら」と、第2章の「科学は子供だけのものか?」で、子供に勉強させておきながら自分は勉強しない大人たちについての批判がありますが、うなづきながら読みました。幸い、私は親からやたらめったら勉強しろと言われることもなく、分かったり問題が解けたり、いろんなことを覚えるのが楽しいので割合自発的に勉強しましたし、大学入学後も西洋中世史の勉強を続けているので、いわゆる典型的な教育ママの実体がよく分からないのですが、テレビや小説などで想像する限り(想像の根拠がこれらなので、実際に存在しないかもしれないですが)どうも矛盾した人たちなのだろうなぁと考えていました。森さんがおっしゃるように、親が(できれば夢中で)勉強する姿を示せば、子供もそれを見て勉強できるのではないかな、と思います。「勉強しろ、塾に行け」という親が、ビール片手に野球を見て楽しんでいると、子供としてはやりきれないでしょう(たとえ親が日中は一生懸命仕事していたとしても、子供もその時間学校に行って勉強して、友達と遊んで、人間関係など様々なことに悩んでいるわけですから)。

 …と、ちょっと飛びましたが、本書のなかで特に興味深く読んだのは第5章です。
 うえに書いた教育の話とならんで面白かったのが、「子供には新聞を読ませない」というエッセィです。某新聞に原稿をされて、新聞に批判的なことを書くが良いかと確認したうえで、OKをもらって執筆したら、やっぱり新聞に載せることはできなかった、というエピソード付きのエッセィです。新聞がいかに情報を歪めるか、を示したうえで、子供には、彼らに自分の価値観が十分に育つまでは新聞を読ませないと言っています。
 考え方としてはとても面白いですが、(テレビも持っていないしまだ新聞をとっていない私がいうのもあれですが)しかしニュースにふれ、現代日本や世界の動向にふれるのもまた大事なことだと思います。テレビはなにげない(?)映像でさりげなく情報操作(や視聴者の感情操作)を狙っているようですし、新聞も森さんがご指摘されているように歪な部分があるとはいえ、やはりニュースを得る上での有用なツールではあります(ネットでのニュースは、ものによってはこれらよりもっと不安な気がします)。なので、玉虫色のスタンスかもしれませんが、ニュースなどを見る際も、大人がそれに飛びつくのではなく、おや、この映像は怪しいとか(以前、某局のニュースで、退職した店員さんがその職場の制服を着ていたりとか)、ここは根拠が不明瞭だとか、的確に指摘をしていけると良いですね。新聞では、二種類の新聞を読み比べると面白いでしょう。

 特別収録も面白いです。デビュー前の手紙では、講談社の編集者さんに、届けられた本の感想を書いておられたり、自作についてのコメントがあったりと、興味深いです。高校生のインタヴューも、読み応えがありました。少なくとも、変なごまかしのないストレートな言葉は、生徒たちの心にもすんなりと通じるのだろうと思います。

 なかなか手に取っていませんでしたが、興味深い1冊でした。

(2009/07/08読了)





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Last updated  2009.07.12 07:32:48
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