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2014.11.22
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~教文館、2012年~


 6世紀から15世紀までのおよそ千年に及ぶ西洋中世の時代について、グレゴリウス大教皇(604年没)からサヴォナローラ(1497年没)までの有名な説教師20名の説教を抜粋・邦訳した一冊です。
 選ばれた説教も、説教師一人あたり1説教から、多く選ばれたトマス・アクィナスで6説教と、数の違いはありますが、いろんな説教にふれることができます。
 本書の構成は次のとおりです(各説教師の説教タイトルは省略)。

ーーー
中世の説教のコンテクスト

グレゴリウス1世
尊者ベーダ
アンセルムス(カンタベリーの)
アベラルドゥス

フーゴ(サン・ヴィクトルの)
リカルドゥス(サン・ヴィクトルの)
アラヌス(リルの)
ヨアキム(フィオーレの)
インノケンティウス3世
フランチェスコ(アッシジの)
アルベルトゥス・マグヌス
ボナヴェントゥラ
トマス・アクィナス
マイスター・エックハルト
ハインリヒ・ゾイゼ

ジョン・ウィクリフ
ニコラウス・クザーヌス
ジロラモ・サヴォナローラ
ーーー

 各説教師の説教の邦訳の前に、その説教師の略歴や思想が簡単に紹介されているのが嬉しいです。



 1000年に及ぶ長い期間から選ばれた説教師たちの説教の抜粋を読んでいくと、様式の変化が実感されました(もちろん、説教師によって異なる部分もありますが)。たとえばアラヌスは、「誘惑に悩まれる者は幸いです」という言葉から、「誘惑」には、人間的誘惑、悪魔的誘惑、神的誘惑の3つがある、といいます。さらに「人間的誘惑」には、贅沢、美食、泥酔の3つがある、という風に、区分していきます。

 と、私の関心からすればとても興味深い一冊なのですが、細かい表現の部分や誤記の部分で、いくつか残念な点もありました。

 たとえば、20頁には、「1123年以後の一連の教会会議は1123年の第四ラテラノ公会議に集約され」、とありますが、第四ラテラノ公会議は1215年です。

 395頁は、ロバート・グロステストという人名が、「ロバート・グロセテセテスト」になっています。セテがだぶってしまったのですね…。

 また、説教テクスト中、他の著者からの引用の部分について、カギ括弧の終わりがなかったり、というのもいくつかあったと思います。

 表現で気になった部分の例は、33頁の次の一節です。「公式書簡の中でグレゴリウスは、彼が修道士としての観想生活の静寂と落ち着いた生活から政治的に動かなければならない世俗の社会と教会統治と煩雑な実務の生活に戻らなければならないことを嘆く感情が表現されている」。「グレゴリウスは」という主語のつながりに違和感を感じます。たとえば、「グレゴリウスが送った公式書簡の中では……ことを嘆く感情が表現されている」とすればすっきりしたと思うのですが…。
 せっかく貴重な一冊なのに、こういう点が散見されたのは残念です。

 とはいえ、私の語力では、中世のラテン語説教をたくさん読むことはなかなかできないので、このように抄訳であっても、中世の多くの説教に日本語でふれられるのはとても嬉しいです。





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Last updated  2014.11.22 13:53:16
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