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2014.11.29
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Preaching the Crusades. Mendicant Friars and the Cross in the Thirteenth Century
~Cambridge University Press, 1998 [paperback edition]~

 西洋中世の代表的な事件である十字軍の際に、民衆を十字軍に徴兵するために、聖職者や托鉢修道会士による説教活動が行われました。本書は、特に托鉢修道会士による十字軍説教の様相を描いた一冊です。事件史的には第四回十字軍までが有名だと思いますが、本書は第五回十字軍頃からを扱います。また、聖地奪回以外の十字軍運動も考察の対象となっています。
 本書の構成は次の通りです。

ーーー
謝辞
略号一覧

序論
第1章 修道会創設者の聖人たちと十字軍
第2章 教皇グレゴリウス9世と初期の托鉢修道士

 グレゴリウス9世
 インノケンティウス4世
 13世紀後期
第4章 托鉢修道会管区における十字軍説教の組織化
第5章 托鉢修道士、十字軍説教、説教補助手引き
第6章 托鉢修道士と十字軍の財政
第7章 托鉢修道士と十字軍誓願の贖宥
結論

補足1 ドレンテ地方への十字軍とドイツのおけるドミニコ会異端審問の設立
補足2 13世紀における十字軍勧説のための説教及び例話のリスト

参考文献目録

ーーー

 簡単に、各章の概要をメモしておきます。

 第1章は、ドミニコ会とフランシスコ会という托鉢修道会の創始者(ドミニコとフランチェスコ)は、十字軍をどのように見ていたのか、という問題を扱います。二人は、十字軍に否定的だったという意見もあるようですが、マイアーはむしろ、肯定的だったという像を示します。

 第2章は、教皇グレゴリウス9世―托鉢修道士を十字軍勧説に用いる戦略で重要な役割―が、托鉢修道会の拡大に果たした役割と、彼らを十字軍説教に用いた過程を描きます。

 第3章は、グレゴリウス9世以下、13世紀の教皇たち(教皇庁)が、いかに托鉢修道士を十字軍説教のために活用したかを論じます。なかでも、いわゆる北方十字軍や、ドイツ皇帝フリードリヒ2世に対する十字軍に関してのそれに重点を置かれている印象でした。



 第5章は、十字軍説教がどのような内容で語られたのかを、説教師が使った手引き(範例説教集、例話集など)から見ていきます。民衆の悔悛を促すことに力点をおいたり、敵に対する怒りを駆り立てたてたりするのが、主な内容だったことが指摘されます。また、奇跡譚により、十字軍のすばらしさを示そうとする話もあります。

 第6章は、十字軍説教に従事した説教師たちが、病気などで十字軍に参加できない人々などから、十字軍参加のかわりにお金を集める職務も負っていたことが示されます。

 第7章も、托鉢修道士によるそうしたお金集めと、托鉢修道士によって参加者に与えられる贖宥について論じます。自分の修道会のための金集めだ、などと、こうした行いには批判的な目が向けられる場合もありました。


 昼休みにごく少しずつ読み進めていたので、読了まで長期間が必要でしたが、なんとか(ざっとですが)通読できました。

 十字軍は有名ですが、実際に戦いに参加する人々を募るために、こうした説教師たちの果たした役割が大きかったことは、あまり意識されてきていないかもしれません。マイアーが結論の最後で言うように、彼ら説教師たちがいなければ、13世紀の十字軍は、実際の歴史とは全く異なった様相を呈していたでしょう。

 十字軍を、説教師の活動という観点から見ていく、興味深い一冊です。





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Last updated  2014.11.29 22:31:42
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