仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2008.09.16
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カテゴリ: 宮城
明治天皇の御料馬として名馬と讃えられた金華山号は鬼首の産だが、当地はかつて仙台藩の隠し牧場で、それも慶長遣欧使節の支倉常長が連れ帰った外国馬が発端だとの伝説がある。

■関連する過去の記事
鬼首の名馬金華山号 (07年12月26日)

今回は、高橋克彦さんの企画からまとめてみたい。
■出典 高橋克彦編『東北(みちのく)歴史推理行』(徳間文庫、1993年)
 この文庫本は、NHKで放映したテーマをもとにした熊谷印刷出版部1987年刊行の『高橋克彦の歴史ズームイン』を増補改題したもの

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金華山号は他の日本の馬と異なり、外国の血が混じっているとの説があるが、明治初期しかも山深い鬼首になぜ外国馬の血が混じった馬がいたのか。



(佐野の子孫の話)親から聞いた話として、四肢の構造が当時の日本馬と異なり、乾燥した立派な四肢だったこと、また、大柄な馬であったこと。

(馬事研究家の村井秀夫さんの話)残っている金華山号の写真からすると、母親は南部馬、父親は明らかにアラブ系である。南部馬は首、背中、腰の線が直線的だが、金華山号は父親似で首が立って、形も大きい。
 資料からも裏付けられる。最近、江戸時代の川渡の御湯守藤嶋吉郎右衛門の後裔の藤嶋孝雄さん(真癒の湯)宅で見つかった古文書。明治5年の租税真高調べで、アラビア飼料と書いている。アラビア馬の飼養者が川渡で15人、馬が30頭いたことがわかった。
 これは藩政時代を通じて当地が伊達の秘牧場になっていたと考えられる。

(郷土史家の只野義男さんの話)鬼首は、鳴子、花山、横堀(秋田県)、最上(山形県)とはそれぞれ峠があって看視されていたから、馬生産には最も環境が良い。盗人滝(ぬすっとたき)という滝がある。他藩の者が夜陰に乗じて鬼首の名馬を盗み、沢の流れを利用して逃げようとしてこの滝に出くわしたのではないか。

水沢の郷右近家には、常長が持ち帰ったとされる銅版画が残っている。その上、郷右近家には、常長が馬を持ち帰って鬼首に隠したとの話まで残っている。

(紫桃正隆さんの話)サン・ファン・バプチスタ号なら馬の10頭や20頭は船倉に積めただろう。記録にはないが、馬を持ち帰った可能性はあると思う。政宗の時代は馬に乗れる資格は今の将校クラスで貴重だった。だから、宣教師の口から欧州には名馬がいると聞いただろうし、支倉派遣の裏には、馬の改良や馬術などの調査研究も含まれていたと言われている。
 支倉一行はスペインを横断して往復したが、バルセロナから船でフランス領地中海を航海してイタリアに行く。その辺が馬の産地。またバルセロナまでは陸路を馬で行った可能性があり、常長には立派な馬が驚異的に映ったのだと思う。是非とも故国に持ち帰りたいとの願望が、武士として当然の判断だったのでないか。
 そもそも下級武士の常長を派遣したのは、天下制覇の野望を抱く政宗の賭け。失敗する可能性の強い賭けで、失敗の際どうするかの含みを彼は読んでいた。常長自身も主君に迷惑をかけないよう覚悟はできていただろう。

常長の晩年は謎に包まれている。伝えでは帰国して2年後52歳で没したとされ仙台の光明寺に墓がある。しかし、墓は他にも4カ所有り、どこに葬られたかは謎だ。

(松島円通院住職天野明道さんの話)円通院は政宗の孫の光宗をまつってあるが、欧州の図案を日本建築にマッチさせようとの工夫がうかがえる。葵の紋だとしてスペードをカモフラージュして入れるとか。御禁制時代だからいかに申し開きができるか全部考えて描いてあるわけである。ガーベラ、葡萄や十字架も図案化され、伊達藩はここを秘物と称して立ち入り禁止にして全然見せなかった。

 馬や製鉄なども同じで、人目のつかない所に隠していた。製鉄は登米郡や東磐井郡の山の中に秘かに設けた。
 馬に外国の血が入っているかどうかは一目で分かるから、絶対に見つかってはいけなかっただろう。

(村井さんの話)文久3年にナポレオン三世が家茂にアラブ馬二十数頭を送っており、付き添いの者が六年で2万5千頭、8年で4万頭にすると豪語している。とすると、常長が持ってきた20頭から、六、七年で日本有数の騎馬軍団を作れる可能性も、あった。

高橋克彦さんは、政宗の野望が文献ではなくして馬の血に秘められていた、金華山号はその生きた証だ、と結んでいる。

(おだずまジャーナル注:上記では各ゲストの話として整理しましたが、司会者の対話の中で説明されており司会者の発言部分も含めて整理している。)


円通院の霊廟三慧殿(国重文)は、昨秋に編集長も夜のライトアップを見物にお邪魔した際に一枚撮らせてもらった。常長が持ち帰ったバラが描かれている。ちょいと画像がブレていますが。

080916円通院三慧殿

■関連する過去の記事
松島円通院のライトアップ (07年11月15日)





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最終更新日  2008.09.16 23:04:14
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