仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2015.09.19
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カテゴリ: 宮城
地元の方には申し訳ないが、宮城県でいま最も注目の地名かも知れない。気仙沼市の九条(くじょう)。国道45号バイパスを挟んで、気仙沼高校付近の市内住宅地も含まれる。

九条小学校や郵便局の名にも見える。また、条南中学校の名は、その学区にある九条小学校と南気仙沼小学校から一字づつとったという。南気仙沼小はさきの大震災で被害を受けて、たしか現在は災害公営住宅が建設されているはず。復興が進んで、いつか必ず港町の賑わいが戻るだろう。

安保法案は今日未明に参院で可決。集団的自衛権や国際社会においてあるべき我が国のスタンスについては、さまざまな意見があろう。また、戦争を引き起こす法案なのか、兵士を危険にさらす法案なのか、などについても考え方は多様だ。今そのことに立ち入らないが、制度として憲法に反する立法を行おうとしているのではないかという点は、極めて重要な論点だった。

自衛の考えを多少は緩めて武力行使の必要性を意識する人の中にも、だとしても憲法に反する疑いがある以上は、憲法改正が先、あるいは憲法改正国民投票の場で国民に問うべきではないのか、という素直な疑念があるだろう。我が国のコンスティテューション破壊を懸念する意見は相当多かったと思う。

国民主権とは国民が主権者であることであり、主権者の国民は憲法を定めて政府や立法機関の行動範囲を規制している。自衛権については9条だし、より一般的な意味でも、憲法の擁護義務はもちろん、厳格な改正手続も定められている。国民投票法も整備された。見方を変えて、少なくとも国政の重大課題である以上、解散して国民に判断を委ねる政治的判断もありえた。

抽象的違憲性が認められず法の番人の事前判断がもらえないのだから、衆院の憲法審査会で学者が全員意見だと主張したことや、過去の長官の発言について、もっと丁寧に対処すべきだったが、これも良くなかった。政治家が判断するという自己陶酔を示すだけ。国民は、たしかに精密な学問的レベルの解釈論までしようとは思わないにしても、せめて、学界や司法界に、一定程度の理解が広がっているかどうかの認識が欲しかったのではないか。賛成派としても、安心したかったのでないだろうか。

解釈変更が砂川判決の範囲内だと強弁し、また、祖父がそうだったように自分の判断も後世に認められるなどと説明する辺りは、9条の意義やそれを議論する価値をあえて低く見積もって見せたと言えるし、また、国会論議や国民的議論喚起を避けようとする意味で民主主義というものを自ら矮小化してしまったという感が強い。

気仙沼の九条は、京都の公家が離散した妻子を捜してこの地に至り、羽黒権現でお告げを受け、高田の米崎あたりで田仕事に従事させられている妻子と再会できたことから、羽黒神社をりっぱに再興し九重の塔を建てたという。これが九条の地名の起こりという説があるそうだ。

港町気仙沼の本郷の背後丘陵地は、香久留が原と呼ばれ(気仙沼高校の校歌に出てくる)、羽黒神社に守られた古くからの住宅地である。九条は、市内の商業地や不動の沢駅(BRT)のすぐ背後でありながら、環境もすばらしく、まさに気仙沼の一等の住宅地だ。



もちろん安全保障は大事な課題で安保法案に寄せる思いも人さまざま。だが、大切な論議をことさら矮小化する政治リーダーの姿勢は、まったく関係ないとはいえ、脈々と大切に守り育てられた地名、そして懸命に家庭や町を再興しようとする人々が住まう場所の名前に照らして、どれほど胸を張れるのか。





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最終更新日  2015.09.19 12:04:02
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