仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2022.10.08
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カテゴリ: 仙台
先日、日本の精神医学のパイオニアで仙台出身の石田昇について記した( 精神医学のパイオニア 石田昇 (2022年8月21日))のは、秦郁彦の著作を読んでだったが、その出自などはわからなかった。阿曽沼先生の著作を読んでいたら、先生が丹念に調べた内容を記していた。

■参考
阿曽沼要『墓誌・碑文・古地図にかいまみる仙台の医学史』丸善出版サービスセンター、2010年

■以前の記事(石田昇について)
精神医学のパイオニア 石田昇 (2022年8月21日)

石田昇は、東北大学医学部の前身である共立病院副院長であった石田真の子である。以下、阿曽沼先生の著作に基づき、概説する(整理と構成はおだずまジャーナル)。

1 石田真(1837-1891)について



石田真は、伊達一世念西公以来の藩医、錦織即休の第六子として生まれ(天保8年)、同じく藩医の石田道隆(現在の東二番町小学校に屋敷があり、第一次宮城県立医学所が開校された)の養嗣となる。明治3年、藩命により中目齋先生とともに大学東校で西洋医学を修め、さらに米国人医師シモンズとヘボンに学ぶ。横浜で塩谷良翰(初代宮城県参事に内定)に説かれて帰仙し、中目とともに共立病院を創立(明治5年)、中目が院長、石田が副院長となる。

地域医療の中核として共立病院の果たした役割は大きく、創立の年には白石に分局を設け、翌明治6年には、石巻、古川に分局を、松山、仙台河原町に出張所を設けた。

明治12年に病院が公立(県立宮城医学校)となると勇退して自宅で開業。信望が厚く門前市をなす盛業で、中目齋とならび当時の二名医と称された。明治24年55歳で食道がんで亡くなる。遺言により山形仲藝が解剖した。弓ノ町の大安寺に葬られた。

石田の居宅には梅樹が数十本あったので、香韻書屋と名付け老後は漢書に親しみ吟詠を楽しんでいた。

石田真の先妻(石田道隆の次女ツネ、明治2年25歳で死去)との間には、息子の康(1863-1951、北海道庁官吏)と娘がいた。継室は佐藤氏娘(市子)で、六男一女をもうけたとあるが、長男が昇(1875-1940)、次男が基である。真が亡くなったときは昇が16歳だった。

2 石田真と昇

大安寺には石田家の墓が二つある。石田真一家の墓と石田昇一家の墓である。昇の墓には、昭和15年5月31日昇行年66とあり、従五位勲六等醫學士 興學院昇雲俊龍居士 と刻まれている。

真が東京・横浜に西洋医学を志して勉強しに行ったのは、先妻ツネをなくした翌年の明治3年で、後妻市子との間の長男、昇は、当時長崎にあった第五高等中学校医学部を卒業し、東京大学医学部に入り、在学中にドン・キホーテを翻訳出版。東大精神科に入局後三年目には『新撰精神病学』を著した大変な秀才だった。シゾフレニーを精神分裂病と訳して日本に紹介したのは昇である。

昇は、明治40年(1907)弱冠29歳で長崎医専初代精神科教授(第二代は斎藤茂吉)となり、大正6年文部省留学生として米国ジョンス=ホプキンス大学に留学した。ところが昇自身が精神分裂症(現統合失調症)を発症し同僚医師を射殺し終身刑となったが、結核を併発し、病状が悪化して日本に送還され、昭和15年松沢病院で亡くなった。

石田昇が地元の仙台を離れて遠隔の長崎に行ったのは、多感な16歳の頃の父、真の死が関係していたのかもしれない。

石田昇先生一周忌追悼会で斎藤茂吉が詠んだ詩

(注:鳴滝はシーボルトが蘭学を教えた鳴滝塾)

■関連する過去の記事(疫病、民俗、感染症など)
仙台とコレラ流行の歴史 (2022年9月19日)
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最終更新日  2022.10.08 18:29:15
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