さんぽ すすんで にほ さがる

高校1年生―拒食症とは知らず・・・


 しかしそんな思いもむなしく、出席番号順で行動することが多かったため、私が判別した私好みの女子たちは出席番号の初めの方で固まってしまい、出席番号が後ろの私は話すこともできず、話の合わない人と固まることになってしまった。

 ★性格の変化★ 個性的とはこのことだ。私が行動を共にすることになったグループはビジュアル系バンドに興味のある人達で、私は全く話についていけなかった。というより合わせる努力もしなかった。自分を殺してまで興味のある振りをしたり、あわせる努力をするのは無駄だと思っていたから。
 中学時代とは違い、私はグループ内で自分を出せなくなり、次第におとなしく無愛想になっていった。

 そこで私は痩せることで自分を表現することに専念した。痩せるという目標に向かって努力しようと決意した。それが一番目に見えて結果が分かるから。他のことに一生懸命になればいいのに、と思うが中学時代から食との付き合い方がおかしかったせいもあり、なぜかそれが自分自身の最重要事項となっていた。また、勉強は中学時代で燃え尽きてしまっていてやる気がおきなかった。

 痩せるためにしていたことの一つは、最初自転車通学だったのを徒歩にすること。往復1時間半以上かかったが、私には物事をじっくり考える良い時間だった。登下校する他の学生に変な目で見られて恥ずかしかったが、痩せるために頑張った。特に、父が出勤のため車で私を追い抜かすときは自分がとても悪いことをしているようで気まずい気持ちがした。

 ★弁当★ 弁当は普通に作ってもらっていたが、おかずの揚げ物は全て衣をはがし、油をタオルで拭いて食べた。ご飯は太らないと思っていたので、ご飯は最後にふりかけをかけて食べた。こんな変な食べ方をしていたが、私のグループの人達は自分たちの音楽の話に夢中で私の食べ方には気づいていないようだった。そのせいもあり徐々におかずは一切食べなくなっていった。

 ★運動★ 家へ帰るとすぐ腹筋運動を開始した。足を上のほうで固定し、100×5セット(500回)、足上げ100×5セット(500回)腕立て伏せ10×5セット(50回)、脚の筋トレなど、様々なことを夕食の時間になるまでやり続けた。もちろん、家族の誰にも知られないようにこっそりやった。
 夕方運動のできなかった日は眠れないぐらい罪悪感でいっぱいになり、皆が寝静まったのを見計らって一階のリビングで運動をしていた。50センチもないウエストは見事に腹筋が割れていた。
 また、いつでもどこでもカロリー消費のことしか考えず、座っていても落ち着かず脚を浮かしてお腹に力を入れて密かに腹筋運動をしたりしてそわそわしていた。

 ★食事★ 朝食には低脂肪牛乳100ccをかけた食物繊維たっぷりのシリアルを量って食べた。夕食はご飯を少なめに盛っていたが、おかずを残すことは許されなかった。母は「太っていないんだから、もっと食べなさい。」と言い、父も「せっかく母の作ったものだから残さず食べなさい。」と言うのだ。
 私は残せないことを悔しく思い、食後はトイレへ行き、当時ウーロン茶は痩せると言われていたため、ウーロン茶の紙パックを破りウーロン茶の葉をトイレの水で無理矢理飲んだ。
 半年後、さすがにウーロン茶の葉を飲むのに疲れ、ダイエット薬(脂肪吸収阻害薬)を沢山手に入れ(入手方法は・・・反省・・・)密かに服用した。

 ★ダイエット薬★ 母は私がどんどん痩せていくのにもかかわらず、夕食をちゃんと食べるのを怪しみ、私の部屋を捜索し薬を幾つか没収した。だが私は先手を打って、棚の後ろなど思いもかけない所に薬を隠しておいた。しかし、薬を飲んでいたということを知られ、過度のダイエットを止めさせられるのではと、おどおどした。

 ★外食★ 自分で決めたカロリー以外は絶対摂取したくないので、外食は徹底的に排除した。だが、数ヶ月振りの親友に誘われて遊びに行った際、外食を避けられなかった。何を食べようか散々悩み、色々なレストランを見て回った。2時間ぐらい歩き回ったあげく、結局入ったお店は、パン屋さん併設のカフェ。食となると異常だったが、親友はそんな私を温かく見守り、2時間という無駄な時間を文句も言わず付き合ってくれた。本当に感謝している。

 ★空腹★ 食事量が少ないので、当然おなかはすいた。夕食は少なく食べ、その後自分で野菜を切ってノンオイルドレッシングを掛けて食べた。また、夜中にこっそり、カロリーの少ないヒジキやわかめを水でもどして調理もせず食べた。

 ★冷え性★ 冬が近づくと、脂肪が極度にないせいで異常に寒くなった。特に登下校は寒かった。しかし猛吹雪でも大雨でも徒歩通学を一度もやめずバスには絶対乗らなかった。バスに乗るのは意思の弱い証拠だと思っていたから。

 ★嫌な性格★ 私は自分でも気付いていたが、性格が変わった。人といるのが面倒になり、独りが楽になった。人と接する時も素っ気なくなり、会話がめんどうで、いざ会話しようとしても何を話せばよいかまったく思いつかなかった。そのため、なおさら孤独になり、孤独な自分の自尊心を保つには痩せるしかなかった。

 痩せなければいけないという強迫観念とは裏腹に食欲はあった。だが実際に口に入れて食べることは決して許されないため、テレビで料理番組やレストラン紹介を見たり、毎晩寝る前に美味しそうなご馳走が載ったカロリーブックを丹念に見ていた。

 これだけ、自分を追い込んで痩せようとしていたのに、他人に痩せるために何か努力しているとは知られたくなかった。だから、徹底的に隠した。


© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: