おいしい 千葉 ~ponの食べある記~

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2006.07.15
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テーマ: 吹奏楽(3486)


(縦の線をそろえる)(もっと楽しそうに)(よそのパートの音をよく聴くように)(分厚いハーモニーの上にそっとのるように)(もっと弱く)(もっと強く)(自己主張する場所をはき違えないこと。そこじゃない)(はい、そこ全力で)

ブラスバンドの魅力は何といってもその壮麗な響きだろう。雑食性ゆえに何でもやってしまうが、玄妙とか幽玄とか神秘とかいうような表現は、どうしても弦楽器に及ばない。高音部・低音部に楽器が少なく、中音部の楽器が折り重なるように多いので、その部分をどう扱うか、どうバランスを取るかでバンドとしての音質が決まってしまう。先生は、特にそこに腐心しているようだった。

あるとき私は、シューベルトの「軍隊行進曲」のピアノ譜を持ってきた。自由練習の際、Clの女のコとTbの陸を呼んで、3人で即席のアンサンブルをやってみた。これで自分のEpという構成なのだから、バランスは極端に悪い。和声は欠音だらけだし、ときには根音まで無くなってしまう。やりながら、区間ごとのそれぞれの役割をきめていく。すこし進んでは止める。顔から楽器を大きくはずす。また再開する。

しかしあとから考えると、それはさまざまな要素を盛りこんだ最良の練習法の一つなのだった。移調の読みかえが必要となる。極度の即応性が要求される。その場その場で、臨機応変な対応にせまられる。コンデンスドの中から自分の音を瞬時に選択して読み取らなければならない。Tb とEpは同音域なので、うまくやらないと混ざりあってしまう。楽譜が一つしかないので、相手のブレスとか視線の先まで汲みとるようになる。

サッカーの練習を見ていると、いつも公式のフィールド上において11人対11人の形でやっている訳ではない。コートを狭くしての5対5であったり、ゴール自体を小さくしての4対6であったり。何色ものビブスで、タッチ数を制限したりして、局面での即応性を磨く練習を繰りかえし行っている。それと似たようなことを、巧まずしてやっていたわけである。

楽器の組みあわせを変えたりした。あれこれ楽譜を持ってきた。この即席アンサンブルに合うのと合わない曲があった。「サウンドオブミュージック」は、少ない音数でも独特の響きが楽しめた。maj7が連続する「白い恋人たち」は、不向き曲の代表だった。

自作曲「夜の・夏の・海」の練習も佳境に入ってきていた。細かい部分の手直しは、その場でパート譜に上書きした。先生の解釈による強弱記号がつくようになった。

帰り道は、クラブの連中と一緒が多かった。自転車の子もいたが、歩きの連中に合わせて自転車を引くか、ゆっくり漕いで遊星のように離れたりくっついたりしていた。ないようでいてけっこう距離がある。

談笑がとぎれ、静かな真空の瞬間がおとずれる。一人が「士官候補生」のイントロを口ずさんだ。するとそれに合わせて、各人がそれぞれ自分のパート音をかぶせていく。口三味線によるバンドの再現。パーカッション担当は、雑多な楽器を一人でこなす。

こうやって歌いながら帰ると、重い足取りがすこしは軽くなった。2拍子や4拍子の曲はたしかに歩きやすいのだが、強拍がいつもおなじ足側に来てしまう。そのときいつも、大太鼓をたたくように強くステップするので、片足だけが疲れてしまうのだ。それでたまに、ワルツや6拍子の曲を混ぜるようにした。強ステップが交互に来て、スムーズに流れるようになる。4気筒エンジンが6気筒にグレードアップした感じだろうか。まわりから見ると中学生の莫迦さわぎにしか思えないだろうが、やっている当人たちはこれが楽しくて仕方なかった。

通り沿いに「ナカムラ」というカレーショップがオープンした。ときどきその店に立ち寄るようになった。おばさん一人できりもりをしている。カレーは、具がほとんどルーに溶けこんだフランス風。口さがない連中は、ビーフカレーなのに中に何も入ってないと悪口を言っていた。しかし目を凝らしてみると、トロトロになった筋状の肉片が無数にのぞいている。

カツカレーを注文する者が多かった。私はここのカキフライ定食が、特にお気に入りだった。つけあわせのマカロニサラダが好きで、ほとんどこれを食べるために頼んでいたようなものである。太くて長くて、中心穴が大きい。独特の食感で食べごたえがあった。揚げの時間を見計らいながらおばさんは、冷蔵庫からタッパーを取りだし、キュウリやマヨネーズと合えはじめる。まわりに広言していたので、となりの陸が(いよいよ登場だぞ)とひじの先で合図をくれる。口もとを一度腕でぬぐう。

天井のほうから、ドンドンと音が降ってくるときがあった。(ごめんなさいねェ。うちの子がうるさくて)どうやら夕飯を急かすように、合図を送っているらしかった。





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Last updated  2006.07.16 07:04:25
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