おいしい 千葉 ~ponの食べある記~

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アンドー@ Re:肉まん アンドー(11/08) ポン様 お世話になります。 お陰さまで頑…
2007.07.13
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「ちょっと…お願いだから、ちょっとだけ話をさせてよ」
混線でもしているように何人かの声がクロスしあった。裏のほうでガサついた音がしたかと思うと、
「あなた、いったい誰なの」
受話器を奪われたのだろう。息の荒い女声がたずねてくる。
「あなたね。いったい何者なの」
その背後から、香穂の(ちょっと)という声がかぶさってきた。

「なんてひどいことをしてくれるの。変な邪魔ばっかりして。香穂が幸せになろうとしているところなのに。なんで横からノコノコ出てきて、それをぶち壊そうとするの。だれにそんな権利があるの」
うまく答えることができなかった。
「あなたって本当にひどい。ひどい人。このろくでなし、人でなし」
短く罵るフレーズが、連発銃の勢いで続けざまにやってきた。人が人であることを真っ向から否定してくるその羅列。

またガサゴソする音がして、今度は男声に変わる。
「うちの子とはもう金輪際付きあわないでくれ。いいか君、聞いているのか。うちの子の行き先はもう決まっているんだ。わかっているのか」
説教のような説得のようなことばが続いた。しかし、その口調は太く落ち着いていた。後ろで母親が、それとはまた別のことを悲鳴に近い調子で叫び立てている。

電話は、それほど長く続かなかった。とにかくこれから彼女の家に出向いていって、今回のことをあやまるということで一段落した。ただ、このあとどうなるのか。どうするのか。どうすればいいのか。一切何も見えてこない。

しかしとにかく。決するときが、いよいよやって来たのだと私は思った。当然だろう。こんなに調子のいい(なあなあ)の関係が、ずっと続けられるはずがない。

一刻も早く顔を出したほうがいいに決まっているが。どんなに車を飛ばしても、彼女の家までは2時間近くかかってしまうだろう。大きく息をしてから、一度気を引き締めようと私は両ほほを手でたたいた。

淡い色のスーツに着替えたあと、鏡をのぞいた。緊張で頬が震えているように見える。とにかくどんなことになろうと、後悔だけはするまいと自分に誓った。何秒間かだけ目を閉じて、集中を高めるようにする。

自分を奮い立たせようと両腕の握りこぶしを固くしぼり、私は外に飛びだした。





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Last updated  2007.07.17 09:44:29
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