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都人に比べると、世なれていない田舎者などは、ただ都から下って来た人、というだけで易々と気を許してしまい、軽々しく契り合うことをするものだけれど、人数にも入らない私など、そんなことになろうものなら、大変な物思いを背負うことになってしまうわ。
身分不相応な結婚を私に求める親達も、長い年月を神仏に祈り、当てにならないことを頼みとしながら、私の行く末を思っていてくださるのだけれど、もし私が源氏の君に嫁ぎなどしたならどうかしら。反ってしなくてもいい心配をすることになるだけじゃないの、と思っていらっしゃるのでした。
そして、源氏の君がこの明石の浦においでになる、その間だけでも、このように御文のやり取りができるなら、それだけで私にとってはこの上ない光栄なことだわ。都から遠いこの明石にいて、評判だけしか存じ上げなかったのに、思いもかけずお姿を「ほのかにも見たてまつり、『世になき物』と聞き伝へし琴の音をも、風につけて聞」けるなんて、身に余る幸せなことですものと、
源氏への憧れを抱きつつも、それ以上を期待してはいけないと戒めておいでなのでした。