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はじめて私が「マタイによる福音書」でのキリストの受難曲を観たのは、TV放映でした。バッハのこの受難曲は3時間を超す大作なため、オーケストラが左右二手に分かれ、交互に演奏していることも、この時初めて知りました。
ちょうど、イエスに一番愛された弟子のペテロが、イエスへの裏切りを歌い上げた後のことです。
背中の曲がった一人の老ヴァイオリニストが静かに立ち上がり、楽器を抱くようにして弾き出したのです。それは甘く哀しく、裏切り者のペテロを弾劾するどころか、まるで亡き恋人に捧げるレクイエムのように、切ないメロディーでした。ヴァイオリンに続き、アルトが「Erbarme dich,mein Gott」と歌い出します。かの有名な第47曲、「主よ、憐れみ給え」でした。
私はこの8分に満たない第47曲にすっかり魅せられ、いくつものCDを買って聴き比べてみたのですが、太く肉厚なアルトの声にいま一つ満足できないのです。ソプラノのように細く澄み切った声に、なかなか出会えないからです。音程が低いと、どうしても筋肉質に聞こえてしまうのかもしれません。
そういった不満はあるものの、今私が一番好きなのはオットー・クレンペラー盤のCDです。ゆっくりと丁寧な演奏で始まる、滅入るような悲しみに満ちた導入部、身もだえするような、うねるような最終合唱も気に入っています。
オットー・クレンペラー指揮
フィルハーモニア管弦楽団、フィルハーモニア合唱団、ハンプステッド教会少年合唱団
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2019年1月 January 4, 2019